その土壌は整いつつある。今年、厚労省は訪問介護の利用回数が多い人に対して、自治体が設ける専門職らの会議で、その妥当性を判断する仕組みを導入する方針を固めた。“使い過ぎ”と判断されると、サービス利用を控えるよう自治体から求められる仕組みになるとみられている。
厚労省に、「要介護度格下げ」が乱発される懸念についてぶつけた。
「まだ詳細を詰めきれていませんが、介護保険法改正を議論する部会でも要介護度の上げ下げに関して不正が発生する懸念については議論されています。なので、要介護度の改善だけをもってインセンティブの支払いになることはありません。その他にも様々な要因を加味しての給付となるはずです」(介護保険計画課)
ただ、その具体的な中身については示さなかった。
◆中小事業者の倒産多発
前出・佐藤氏は「来年の4月までどのような仕組みに落ち着くのかわからない」と前置きしながら次のように説明する。
「現在、厚労省はインセンティブを支払う条件として『ストラクチャー』『プロセス』『アウトカム』という3つの項目で判断する案を提示しています。
事業者の人的配置など介護に関わる構造がストラクチャーで、リハビリなどの工程が適切かを評価するのがプロセス。アウトカムは結果どのように利用者の状況(要介護度)が改善したかということ。
そして、ストラクチャーの項目では介護ロボットやITネットワークのインフラ設備などが導入されているかがチェックされるともいわれています。体力のある大手事業者はいいのですが、地域密着型の中小の事業者が無理して設備投資することも考えられます。それが利用者の改善につながらなければインセンティブは出ず、経営を圧迫し、倒産が多発する懸念がある。もちろん、入居者や利用者がいちばん困ることになる」