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【関川夏央氏選】2018年に読みたい「“戦中派”の実感」

80歳の養老孟司氏がつづった『遺言。』

 年末年始はじっくりと本を読む良いチャンス。『週刊ポスト』の書評委員が選ぶ書は何か? 作家の関川夏央氏は、「“戦中派”の実感」を読み解く本として、『遺言。』(養老孟司・著/新潮新書/720円+税)を推す。関川氏が解説する。

 * * *
 都会生活に自然は介入しない。汚れは最小限、風雨は吹き込まず、暑くも寒くもない。「感覚所与」を「いわば最小限にして、世界を意味で満たす」のが都会生活で、現代人はその利便を享受しつつ苦しんでいる。

「意味のあるものだけに取り囲まれていると、いつの間にか、意味のないものの存在が許せなく」なり、自分と「同じでないもの」、自分が理解できない存在を、「意味がない」と断定して「浄化」におよぶ。たとえば、相模原の施設での十九人殺しである。

 少子化さえ「意味」の問題に帰着するだろう。

「都市は意識の世界であり、意識は自然を排除する。つまり人工的な世界は、まさに不自然なのである。ところが子どもは自然である」
「なぜなら設計図がなく、先行きがどうなるか、育ててみなければ、結果は不明である」

 とすれば、「意味」が不確定な子供は不気味な存在で、少子化と単身者化は都会的生活の必然の結果ということになる。

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