歌舞伎町で「最後の裏DVD販売店」が摘発された際、警視庁は過去最多となる計32万枚ものDVDを押収。同店とその系列店舗は3年間で18億円以上を”荒稼ぎ”していたとされるが、大迫氏は深いため息をつく。
「3年間で18億では、人件費や運営費、その他もろもろの経費を考えれば割には合う。ただ一方で、今後の伸びしろ、そして逮捕されるリスクを考えれば”やんない方がいいよね”と業者が考えるのは自然なこと。今は、海外にサーバーを置く裏ビデオ配信業者一強という構図。昔ながらの手法で裏ビデオを製作し販売しているところは存在しないでしょう」(大迫氏)
業者や個人が、海外にサーバーを置くアダルト作品の配信サイトに、自身で撮影編集した映像をアップし、ダウンロード数に応じた報酬を受け取るようになったのはごく最近の話。児童ポルノや盗撮モノなど、違法性の高い過激な作品が大量に視聴できてしまう環境は、これら海外にサーバーをあるサイトを通じれば「足がつく可能性はほぼない」という理由から出来上がってしまったという。
「我々がネットに食われた、という認識で間違いない。まあ、一つの文化が終わったという感じでしょうか。が、こっちもどうにかこの業界でやっていくしかないから、ネット上にアップロードされている映像を繋いで一本の作品にし、勝手に売ったりしている。いつまでこんなことが通用するかわからないけど、需要がなくならない限り供給はするし、そうしないと生活できないから……」
裏ビデオを「文化」と呼び懐かしむ人々もいる。しかし違法が違法を呼び込む空間は日々拡大し続けており、当局が締め付ければ締め付けるほど問題は複雑化の一途をたどり、検挙に至るまで膨大な労力がかかるというジレンマにも陥っている。そういった中で「法律完全無視」を決め込んで顔色一つ変えない不届き者が増えていることも現実だ。
「裏ビデオ店が壊滅」というのは、世間的にも健康的に聞こえ、そして当局にとっては市民に誇れる「偉業」であったかもしれない。しかしその裏で、手を変え品を変え「裏ビデオ」やそれに相当する物の流通は未だ行われ、よりひどい、残酷なコンテンツが産み出されてもいる。
今、構築されようとしている新たな裏モノ販売の”スタイル”もまた、その「壊滅の時」に世間は「文化が消えた」と嘆くのか。その程度の感傷で済ませ、問題の本質から目をそらしてもよいのか。今まさに「裏ビデオの文化が終わった」と嘆く一部の人々を見て、さらに複雑になりそうな、未来の光景を想像せずにはいられない。