「結婚式などが続いたため、夫に内緒でも借りられるソフト闇金を利用しました」
都内在住の主婦・A子さんは、知人の結婚式に持参する祝儀を捻出できず、クレカのショッピング枠を「現金化」できるという業者を通じて、現金3万円を捻出しようと試みた。しかし、3万円を手にするには手数料や金利分などを含め、5万円以上を借り入れなければならないことを知る。そんな時、ネット上のバナー広告でソフト闇金の存在を知った。
「ソフト闇金なら、4万ちょっとの借り入れで手元には3万円が残る、そう説明されました。やり取りもメールで出来て、ネットにはこの業者の悪評もなかった。こうして安易に借りてしまったのです……」
その後、Aさんは全額を返済したが、週ごとに別の「ソフト闇金」業者から電話やメールが寄越されるようになり、少しでも生活が苦しいと思った時には積極的に利用するようになってしまった。前出の元闇金業者は、A子さんも完全に「カタ」にハマったパターンだと指摘する。
「借り癖は直らない。こういう客は細く長く持っておく。昔みたいに数十万を貸して百万円を回収する、ということは現実的でないから、なんとか返せそうな額を貸しつけ返済させ、回数でアガリ(儲け)を出す。だからこそ”ソフト”であることが重要だし、返済相談などアフターケアも行えば、客もカモられていると気がつきにくい」
実は当初、ソフト闇金の窓口担当者から融資を断れらたというA子さん。担当者がA子さんを”個人的に信用”した上で、手元に3万円が残るよう調整し”個人的な貸しつけ”を行ったのだという。こういったやり取りで、よりソフトさ、人間らしさを演出しているものとみられる。さらに”個人間融資”であることから、出資法に抵触せず、借りた人間に「人情的なプレッシャー」を与えることができると考える業者の目論みもあるようだ。
しかし違法は違法。貸金業者に義務づけられた登録をしておらず、闇金より安いとうたっている金利も、法に沿ったまともなローンなどに比べて高すぎる。ところが、様々なやり取り、駆け引きを通じて、被害者に被害の自覚を持たせない。この飴と鞭の使い分けは、詐欺師や反社会的勢力の常套手段である。
「悪いやつだけどいい人」などというのは、漫画や小説の中だけに存在する幻であり、弱い立場、苦しい立場にある人々は、往々にして彼らに飛びつきやすい。ソフトだろうがハードだろうが、騙しのプロ達は被害者の首を、ゆっくりだが確実に、締め上げていることに他ならないのである。「ソフト」という言葉にだまされて、一生、悪人に金を巻き上げられ続ける生活にはまり込んではならない。