ライフ

「口パク動画」人気の理由 承認欲求と自己表現、同時に満たせる

「口パク動画」アプリが世界で人気

 2017年、SNSで中高大学生が夢中になったもののひとつに「口パク動画」がある。リップシンク動画とも呼ばれ、自分の動き、とくに口の動きにあわせてヒット曲などが流れる吹き替え映像のことをさす。この動画を作成できるアプリが世界中の若者たちを虜にしている。米国のミレニアル世代で人気に火がついた「Musical.ly(ミュージカリー)」、K-POPアイドルがよく使う「kwai(クワイ)」があり、日本では繰り返し流れる動画広告をHIKAKINが真似した「TikTok(ティックトック)」がApp Store無料アプリランキング上位にある。口パク動画の人気と背景について、TikTokを例にとり、ITジャーナリストの高橋暁子氏が解説する。

 * * *
 TikTokは、自分の好きな曲を選び、曲に合わせて口パクしたりダンスしたりなどの15秒までの短い動画が録画できるアプリだ。10代の子たちの間で特に人気が高まっている。

 MixChannelで人気が高いモデルの渡辺リサさんも、今は動画はTikTokで撮っている。MixChannelにもTikTokで撮った動画を投稿しており、執筆現在256万人のフォロワーを集めている。

 双子ダンスで知られるりかりこさんや、人気YouTuberのHIKAKINさんもTikTokを始めている。TikTokはとにかく「広告がうざい」と言われることが多いが、HIKAKINさんはこの広告を真似した同じ動きがループする動画などをTikTokに投稿している。同じ動画はYouTubeのHIKAKIN公式チャンネルにも投稿され、あっという間に100万回再生を突破した。これらの投稿がきっかけとなって、TikTokはApp Store無料アプリランキングで1位になった。

◆リズム感に自信がなくても音楽に合わせられる

 TikTokでは、口の動きに合わせたリップシンク動画が特に人気が高い。これまでも双子ダンスなどに代表される音楽に合わせて踊る動画はあったが、それとは少々異なっている。

 縦長で上半身のみのものが多いので、動きは顔だけ、或いは上半身だけで済む。実際人気の動画を見ると、音楽に合わせてウィンクや口を開けるだけというものもあるくらいで、非常に動きが簡単になっている。音楽も初めから短めで用意されており、好きな部分を切り出すのもスライドするだけなのでとても容易だ。

 MixChannelでは、先に動画を撮影してから音を当てはめて動画を作成する。ところが、TikTokは音楽を流しながら動画を撮影できるのでスピーディだ。しかも撮影の速度を変えることができるので、スローモーション撮影すれば音楽のスピードについていけなくても、動きを真似しやすいのだ。普通にダンスを踊るのは苦手でリズム感に自信がなくても、音楽にぴったりの動きを撮れる。

◆一人でも容易に自己表現、リア充アピール可能

 TikTokの人気は、撮影の敷居が低いだけではない。MixChannelでは、友だちと双子ダンス動画を撮ったり、彼氏とラブラブの様子を見せつけるようなキス動画が人気が高いカテゴリーだった。人気なので誰でもつくれるのかというと、まず協力してくれる友だちや彼氏が必要な上、動画を完成させるには編集に手間も時間もかかるため、ある程度のスキルがないと難しかった。

 ところが、TikTokを使うと一人でも簡単にミュージックビデオができる。撮ったビデオは容易にミュージックビデオ風に加工でき、本格的に見える。

 口パクの動作をリアルで実現しようとすると、かなり練習しないとならない。たとえば、Instagramのフォロワーが700万人超の渡辺直美さんが人気タレントになったきっかけは、ビヨンセの曲にあわせて口パクで本物そっくりにダンスを再現したことだった。この口パクは練習を積まないとできないが、せいぜい15秒の動画なら、特別なトレーニングやセンスがなくても可能だ。

 つまりアプリを使えば、本格的ミュージックビデオの主役になれる。何かの主人公である自分を表現できるので、一人でもリア充動画が作成できてしまうのだ。ネット上で自分がリア充、つまり現実の学校や友達と楽しく充実して暮らしているとさりげなくアピールできることは、若者にとって魅力的だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

オフシーズンを迎えた大谷翔平(時事通信フォト)
《大谷翔平がチョビ髭で肩を組んで…》撮影されたのはキッズ向け施設もある「ショッピングモール」 因縁の“リゾート別荘”があるハワイ島になぜ滞在
NEWSポストセブン
愛子さまへのオンライン署名が大きな盛り上がりを見せている背景とは(時事通信フォト)
「愛子さまを天皇に!」4万9000人がオンライン署名、急激に支持が高まっている背景 ラオス訪問での振る舞いに人気沸騰、秋篠宮家への“複雑な国民感情”も関係か
週刊ポスト
群馬県前橋市の小川晶前市長(共同通信社)
「再選させるぞ!させるぞ!させるぞ!させるぞ!」前橋市“ラブホ通い詰め”小川前市長が支援者集会に参加して涙の演説、参加者は「市長はバッチバチにやる気満々でしたよ」
NEWSポストセブン
ネットテレビ局「ABEMA」のアナウンサー・瀧山あかね(Instagramより)
〈よく見るとなにか見える…〉〈最高の丸み〉ABEMAアナ・瀧山あかねの”ぴったりニット”に絶賛の声 本人が明かす美ボディ秘訣は「2025年トレンド料理」
NEWSポストセブン
千葉大学看護学部創立50周年の式典に出席された愛子さま(2025年12月14日、撮影/JMPA)
《雅子さまの定番カラーをチョイス》愛子さま、“主役”に寄り添うネイビーとホワイトのバイカラーコーデで式典に出席 ブレードの装飾で立体感も
NEWSポストセブン
12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
会社の事務所内で女性を刺したとして中国籍のリュウ・カ容疑者が逮捕された(右・千葉県警察HPより)
《いすみ市・同僚女性を社内で刺殺》中国籍のリュウ・カ容疑者が起こしていた“近隣刃物トラブル”「ナイフを手に私を見下ろして…」「窓のアルミシート、不気味だよね」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情