私の新橋と本橋氏の新橋は二十四年の時差があるが、いまから思えば大差はない。ニュー新橋ビルの占いコーナーも町パスタのナポリタンもひらすらなつかしく、早く昔になればいい。
この一冊には古き熱き町新橋への恋情が、全十章90話のすべてにこめられている。いまだって新橋ガード下で酒を飲むのはイノチガケで、だからこそヨレヨレに酔うことになる。スタジオジブリの鈴木敏夫も二十代から四十代を新橋で過ごした。バブル焼け跡派の筆者の『上野アンダーグラウンド』につづく東京の異界シリーズ。ますます快調、この一冊を読んで新橋ナポリタンを食べに行こう。
※週刊ポスト2018年1月1・5日号