「極端な低賃金で休みもなく働く縫製工場の外国人技能実習生も気の毒だと思いますが、彼らが作ったものを売っている日本人の私たちだって同じだと思います。奴隷だと感じます」
真理亜さんたちには、辞めるという選択肢はないのか。夢は破れたとしても、もっとまともな就労環境の下で、健康的、人間的に生活出来るはずではないのか。
「頑張れば、昇進すればもっと楽になると言われ続けてきました。そして少しは昇進したはずなのですが……。服飾系の専門を出て10年。転職するにも接客以外のスキルはなく、高級店への転職も難しい。マーケティングなどの業種を希望しても、上が詰まっている状況では、私たちに機会、順番が来ることはない。また、あまりにも近しいブランドやメーカーへの転職がタブーという雰囲気もある。正直、どうしていいかわかりません」
こう漏らす真理亜さんは、筆者のインタビューを終えるとすぐに本社のある新宿に向かった。正月の初売り対応シフトで、年明け7日までまったく休みがないという。これほどの激務にもかかわらず、アパレル関係者だからか、頭の先から指の先まで、ファッションには隙なく見えた真理亜さん。その出で立ちは立派な大人で、立場からも部下を束ねる責任感のようなものが感じ取れた。
きらびやかなギャル向けアパレル業界にいるためからか、そこで働く彼女たちの見た目は華やかで苦労とは無縁で、華麗にすら見える。だが、実際にはパワハラをともなった過酷な労働を強いられており、転職もままならない。そして低賃金、重労働に日々身体と精神を削られながら、さらに未来も見えていない。そこで働く彼女たちは、ほとんどが「ブランドが好き」「アパレル業界に憧れている」といったことにつけ込まれ、悪条件でも働くことを選択させられている。彼女たちから、あからさまにズバリと会社を恨むような言葉はないが、サービス残業を断れない状態にあることは誰もが吐露している。筆者にはまさしく、やりがいの搾取そのものという風に見える。
しかし、真理亜さんのような若い日本人が不満の声をあげると「若いからだ」「努力が足りない」と罵られる環境もあろう。まして、職場が販売する商品やブランドへの愛情につけこまれ、サービス残業や長時間労働が常態化しては、夢見る暇どころか具体的な未来へのプランも立てられないまま、今日の労働に時間を費やすばかりだ。
彼女たちが「弱者」でなければ、一体誰が弱者なのか。バブル景気を超えたという2017年が過ぎたが、真理亜さんたち、そして私ですら、その実感を得られることはほとんどなかった。2018年には、彼女たちの仕事への愛情が、せめて搾取されない環境へと向かってもらいたい。