VTRでは、さらなる驚きも待っていた。1993年7月4日の映像を使い、『このあとケガから復帰をするため、過酷なリハビリ生活を送ったものの、その輝きが戻ることはなく、現役最後は2軍の試合に登板』とナレーションを被せたのだ。
「伊藤は約2年に及ぶリハビリ生活を乗り切り、1996年終盤に復帰し、1997年には抑えのエースとして7勝19セーブ、防御率1.51で日本一に貢献し、カムバック賞まで受賞しています。翌年以降は先発に転向し、2000年までローテーションの一角を占めた。それにもかかわらず、『わずか2ヶ月半で消えた!』と復活を全くなかったかのように扱うのはいかがなものでしょうか。
時間の問題もあるとはいえ、細かく伝えなくてもナレーションなどで上手く処理できるはず。もし活字媒体で復活に触れず、『わずか2ヶ月半で消えた!』と書いたら、ファンから非難が止まないと思います。驚いたことに、番組の内容に補足も入れず、そのまま記事にしていたニュースサイトもありましたが……」(同前)
最終的に当時の監督である野村克也氏が伊藤と対面し、酷使したことを謝罪。コーナーの幕は閉じた。
「野村さんは何も言わないでしょうけど、復活した事実を消してしまったら、野村監督にも迷惑が及ぶでしょう。ファンは番組を観れば、制作者がこだわって作ったのか、手を抜いて作ったのかわかります。野球に詳しくない門外漢のスタッフが担当したのでしょうから、指名したプロデューサーにも責任があると思います。
テレビ的には『わずか2ヶ月半で消えた! プロ野球史上最高の天才』と煽ったほうが数字を取れると思っているのでしょうけど、そういう事実に基づかない煽りによって、テレビから視聴者が離れているということに気付くべきなのではないでしょうか」(同前)