芸能

NHK『女子的生活』は混乱するドラマ 振り回される快感あり

番組公式HPより

 別人格になり切るのが仕事とはいえ、異なる性別を演じることは経験豊富な役者でも容易くないだろう。そこに挑戦している気鋭の俳優がいる。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 ドラマを見ていた人が思わずつぶやきました。

「どっちなの? わかんない」

 私自身も、画面を観ながら何度も自問しました。

「この人男、だよね? それが女の役をやっているんだよね??」

 不思議な感じ、そして一度は納得。また疑問を感じる……の繰り返し。こんなに細くてキレイな足をしているんだから、女の子に違いない。でも、体が大きいからやっぱ男?アップになるとぱっちり目がカワイイ女の子。いや、声がちょっと違うような……?

 混乱するドラマ。混乱させられるのが楽しいドラマ。振り回される快感。それが『女子的生活』(NHK金曜22時、全4回)の世界です。

 主人公は「女子的な生活」に憧れ都会へ出てきた、ファストファッション通販会社に務める小川みき。見た目はスラリとした大柄美人。しかし秘密がある。心は女、身体は男。そして、女の子が好きという「トランスジェンダー」なのです。

 なんともフクザツな設定。公共放送の「NHK」で、みんながテレビを観ている「金曜午後10時」というメジャーな時間に放送するドラマとしては、かなり異色でぶっ飛んでいる、と言えるでしょう。

 説明より何より、みきの姿が雄弁に物語る。ぱっちりとつぶらな瞳、肉厚な唇はキュート。すらっと伸びたキレイな足にゆるふわセミロングの髪、フェミニンな雰囲気のファッション。

 みきの性別は男。しかし、格好は女。でも、「女のふりをしている」のではない。女装、つまり「女の子風に外見を装っている」のでもない。言ってみれば「みき」という生き物そのもの。声の出し方、手先、体のよじり方。スカートの裾を扱うしぐさ。一つ一つの所作が「まねごと」や「映し」を超えて血が通っている。そこが何よりも不思議で、新鮮で、興味深い点です。思わず見入ってしまうこの作品の魅力です。

 複雑な主人公・みきに見事になり切っているのが志尊淳さん。映画『帝一の國』等で注目され、今最ものっているイケメン俳優の一人です。

「表情の作り方、所作、歩き方、体型の維持、肌のケアも入念に行い、女性として生きるということに徹しました。男性として無自覚に生きてきたこれまでの自分にとっては想像以上に困難な作業でした」(NHK公式ホームページ)と志尊さんは「みき」を演じることについて語っています。

「(役作り)の過程は、内に秘めている女性性を探すという作業でもあり、自分とは何か他者とは何かを考えるまでに至りました。今までアタマでしか分かろうとしていなかったことが、実感として分かったことは大きかったです」(同)

 志尊さんはきっと、外見を女に似せること以上に、自分の内に秘めている女性の断片に出会い、深い何かを発見したのでしょう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン