82歳の時にはモンゴル平原をテント生活しながら旅した。それからは風景を追憶して描き続けている。
「昔見た景色は当時の色彩のままに蘇ってきます。絵は本当に奥が深くて、年を取るごとにわかってくる。101歳の今が、一番絵がわかってきたと感じます。ケシの花も、昔行った時以上に描ける力がある」
100歳を過ぎてなお、「成長」を実感しているという入江さん。そのパワーの源はどこにあるのか。
「恩師の林武先生(1967年に文化勲章を受章した西洋画家)は『命懸けで描け』とおっしゃっていました。私は先生が本当に命懸けで描く姿を見てきたので、『なにくそ~』っていう気持ちで全身全霊で描いています。そのくらいの気力で描かなければ、絵で人を魅了することはできません」
NHKの取材中も、道端に水仙が咲いているのを見つけると、取材そっちのけでその場に座って絵を描き始めてしまったという。
「僕がブレーキをかけなければ描き続けてしまうので、憎まれ役になるんです。いつも『放っといて』って怒られる」(息子の潔さん)
夜中でも、目が覚めると「よーし描いてやろう」と思い立って絵筆を握るという。絵に対する情熱は、老いてますます盛んだ。
※週刊ポスト2018年1月26日号