私は顔の造作が極めて可愛いわけでも美しいわけでもない。ある時、同じく港区女子で、何度か一緒に飲みに行っていた美人のナオミが私を陰でこう言った。
「リサコって可愛い可愛い言われてるけど、そんな可愛い? 雰囲気が可愛いだけでスタイル細いからじゃん! 別にそんな可愛いと思わないんだけど。あんな女を好きっていう男も男だよ」
そんなどうでも良い僻みだった。ライバルは常に自分と、そして目の前の男である。モテる女を僻んだところでブスのスパイラルにハマるだけである。なぜモテるのか、男は何を好くのか、“ニーズ”を理解して自分が変わることが港区女子上位女への近道である。女といくら連もうが仲良しだろうが、申し訳ないが彼女たちと同じ墓に入る将来の予定はない。女の目を気にしていては弱肉強食の世界では生き残れないのだ。
ナオミはと言えば、「私は美人でCAだから!」と、ツンケンしていた。「私が付き合ってあげてるんだから、私の存在がありがたいんだから、料理なんてしないし、いるだけでいいでしょう? ね? 私のこと好きなんだから」と、多くの人はイラッと来るようなことをよく言っていた。愛嬌がなくてももてはやされるのはクレオパトラくらいじゃないだろうか。大概の男性は、女に安らぎを求める。ツンケンして“男に追わせる”のがいいなどというテクは長続きはしない。
しかし当時は、ナオミの陰口を、ちょっと傷ついた話として、妹に話していたのだ。ちなみに妹も港区界隈ではチヤホヤされる女子である。それからしばらくして、妹が、いい話を持ってきた。