「テスラはシリコンバレーの一ベンチャー企業の域を超えて、短期間でEVのブランド価値を高めたことは確かです。それはアイデア豊富なマスク氏の壮大な構想や話題づくりの巧みさも相まって投資家の期待度にもつながっていました。その証拠に、ネガティブ情報が出ても株価はあまり下がりませんからね。
とはいえ、EV開発には巨額の資金が必要なうえ、優秀な人材確保も欠かせない。結局、年間販売台数が8万台程度しかないテスラの経営は万年赤字続きで、手元資金もあと数か月で枯渇すると予測する米メディアも出始めました」
まさに台所事情は“火の車”といえるテスラ。市場関係者の間では、
「事業家というより投資家に近いマスク氏は、経営破綻するぐらいならEV事業をそっくり手放すのではないか」
との噂まで持ち上がる始末。売却先には今後EV市場の拡大が見込まれる中国のベンチャーや、以前テスラと提携関係にあったトヨタの名まで囁かれている。いずれにせ、当面マスク氏の苦しい舵取りは続きそうだ。
「壮大なビジョンや夢物語を持つのは結構ですが、それが単なる投資家としてのギャンブルに過ぎず、身の丈に合ったモノづくりができないのならば経営者失格。“大ボラ吹き”といわれても仕方ありません。
マスク氏が後に天才起業家列伝の仲間入りをするかどうかの真価が問われるのは、むしろこれからでしょうね」(前出・福田氏)
まずは火星に運ぶEVより地球上でEVを安定供給させられなければ、台頭する競合メーカーをはねのけ、新しい価値を創造するのも一層難しくなるだろう。