会場には丸テーブルが9卓用意され、6~7人ずつ着席した。参加者はみな、数枚の紙を大切そうに抱えている。この紙は、参加者の子供のプロフィールを記したもの。「生年月日、年齢、続柄、身長、結婚歴、最終学歴、職業、親から見た子供の性格・長所」などに加えて、「お相手に望む人柄、希望年齢、希望婚歴、最終学歴」などが記載されている。
ほとんどの親は着席と同時にこの用紙を食い入るように見つめて熱心にメモを取る。響子は気になった大卒、金融関係勤務の男性の番号にそっと「○」をつけた。
このお見合いでは、息子を持つ親から、お目当ての娘を持つ親に話しかけ、後半はそれが逆になる。双方が納得したら子供の写真や経歴が記載された「身上書」を交換する。そして後日、子供同士の“リアルお見合い”が開かれる。
主催者の声がけでフリータイムが始まった。みな一斉に席を立ち、意中の参加者に“アタック”する。初参加の響子がドギマギしているうちに会場は早くも熱気を帯びてきた。
「お嬢様のお仕事は公務員とありますが、結婚して辞められてもいいですか?」
「大丈夫です」
「親と一緒に暮らすのはどうですか?」
「ケースバイケースです。なるべくなら夫婦だけがいいそうですが…」
などと、結婚を前提とした具体的なやり取りが会場のいたるところで交わされる。
会場を歩き回っていろいろと話を聞くと、こうした会に何度も参加している人も多かった。奈良県から来た母親(59才)は、「今回が10回目」と打ち明けた。
「34才の娘の相手を探しています。娘は金融関係でバリバリ働いていますが、『あまりいい男がいない』とボヤいているの。親のお見合いで見つけた相手と何度かお見合いしたけど気に入らなかったみたい。アウトドアやスポーツが好きなので、同じような趣味を持っている人がいるといいんやけど」
34才の息子を持つ父親(60才)は6回目の参加だ。
「3年前から参加しています。息子には事前に話していますが、どちらかといえば親主導。何とか早く結婚してほしいと思うのですが、息子はおとなしく口下手でなかなか相手を見つけられない」
7人の息子側の親が列をなすテーブルが響子の目に入った。列の先の女性のプロフィールを見ると、「33才、大学院卒の公務員、本人も親も地元に暮らす」とある。テーブルの上にある身上書に貼られた写真をチラリと見ると、かなりの美人。やはり容姿も大切なようだ。
だんだん場の雰囲気に慣れてきた響子。徐々にどの親も自分と同じように切羽詰まっていることがわかってきた。たとえば、42才の娘を持つ母親(65才)はこう話す。