「実は全部コインチェックに預けていた、と白々しい説明をしてきた。本当は運用なんかしていなかったと僕は思っています。ちょうど騒ぎになったから、コインチェックを隠れ蓑にして、俺のカネを奪い取ろうとしている。でも……コインチェックと言われたら、誰も保証はしてくれないですし、僕もバカだったし……」
さてこのA香なる女性、一体何者なのか。A香を知る関係者によれば、一世代前に流行った「情報商材ビジネス」バブル期にも、六本木や麻布界隈で開催される派手なセミナーに出入りしていた。昼間は「会社員」と自称しているが、その正体は北関東の某風俗店に勤務する風俗嬢。セミナーの時などに、パパ活で知り合ったイケイケの情報商材屋グループから招かれ、いわゆる”ギャラ飲み”要員として参加していた、有名な女グループの中の一人だという。
“ギャラ飲み”とは、男性から女性に謝礼が支払われる飲み会のこと。タクシー代という名目で渡されることもあるが、女性がアルバイト感覚で参加する飲み会であることが共通している。今ではマッチングアプリなどで誰でも開けるようになったが、元々は、富裕層が友人どうしの飲み会を盛り上げるために利用していたシステムだ。繰り返し参加する女性は限られているため、A香は目立っていたようだ。
満本さんに一円も返済しないA香だが、実際には仮想通貨で二千万ほどの儲けを出していたらしい。まとまった金を手にした彼女は、それまで勤めていた風俗店を退職。現在は “仮想通貨女子”などと自称して、読者モデルのように華やかな身なりと雰囲気で雑誌に登場することもある。そして、元情報商材屋たちと共謀しつつ、満本さんのような人を見つけては親密になり、「増やしてあげる」と金を預かって回っていたのだ。
「A香もその取り巻きも、確かに仮想通貨はたくさん持っています。でも、ちゃんとした運用方法なんて知らないはずだし、ある日偶然、金持ちになっただけ。俺のカネを盗んだ泥棒のくせに、何が仮想通貨女子かと。もう仮想通貨も女もこりごり。全額奪われなかったのはせめてもの救い……。真面目に働きます」
仮想通貨女子を名乗る女性たちの多くは、本当に仮想通貨について勉強し、自分の金で真面目に投資に取り組んでいる。だが、ブームになれば必ず、ニセモノが紛れ込むのが世の常だ。A香もそのニセモノのひとりだったのだろう。
ついに仮想通貨バブルが弾けた、とも言われているが、バブルに乗じた仮想通貨を口実にした詐欺、詐欺まがいの誘いは一向に無くなる気配がない。「これからまた上がるんです」「絶対に儲かります」などといった詐欺師のささやきが聞こえてきそうな昨今のタイミング。おいしい話はない、ということを今一度肝に銘じよう。