最後に紹介するのは、かえつ有明中学校(東京・共学校)の「思考力入試」の思考力Iの問題だ。
さまざまな動物の「知能」に対する評定値の平均と順位が示された資料が示された。〈人間の知能を100としたとき、さまざまな動物の知能がいくつになるかを、大学生120名に回答してもらったときの平均値を表したもの〉だという。そこで以下の設問だ。
【問題】
あなたなら、「オウム」を資料のどの動物とどの動物の間に位置づけるか答えなさい。また、その理由を30字以内で答えなさい(正しい答えがあるわけではありません。理由づけの力を見るものです)。
◆正解よりも「思考力」
この学校は「思考力入試」を3回行っていて、この分野に力を入れている学校の1つである。掲載したものは3回のうちの最初の入試回のもの(いちばん易しい)。なじみのない方は「思考力入試」というと男子の受験生のほうが多いという印象をお持ちと思うが、この学校は3回とも女子のほうが多い。
この問題は設問にもある通り、正解があるわけではない。どこに位置付けてもいいから、その理由の説得性があればいいのである。初めて出会った問題に対して柔軟に思考できるか、を見ている。まさにこれから巣立っていく変化の激しい社会に対応できる力が求められているのである。
まだ中学入試の大多数の問題は、学習してきたことがどの程度身についているかを見るものであるが、今回紹介したようなタイプの問題は徐々に増えつつある。また、2科・4科ではない「思考力入試」「総合入試」の受験者も少しずつ増えてきている。
中学入試は大学入試より一足早く動き出している。こうした変化は、大学入試改革がもたらしたものでもあるが、その奥には経済・社会のグローバル化があるのだから、子どもたちの将来のためにも有効なものであるはずだ。