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2018.02.20 07:00  SAPIO

猫も杓子も口にする「おもてなし」 本当に誇るべきか

同志社大学政策学部教授の太田肇氏


◆「完璧主義」より「いい加減」

 より大きな問題は、これらに費やされる労働力、コストが価格に転嫁されないことだ。労働力が浪費されていると言っていい。浪費されている人件費などのムダを全部集めたらいったい何兆円になるだろうか。

 海外のサービス産業はそこまで丁寧ではないし、ある意味いい加減というか、適当な案配ができている。日本は適当な案配ができずに完璧主義に走っている。

「完璧」と聞くと良いことのように思うかもしれないが、完璧にこだわることで他の価値が犠牲になっていることが多い。それは時間であったり、金銭的なコストだったりする。

 欧米に比べて日本の労働生産性は極端に低い。原因のひとつに、完璧主義で細かいところばかりに目がいって効率化を図れないことがあるのではないか。背景には、旧来の工業社会の考え方がモノ作りだけでなく、サービスを提供する側、受ける側、日本社会全体に浸透していて、時代は変わったのにその考え方からなかなか脱却できないでいることがある。

 高品質のものを作って、スペックを増やせば増やすほど、客は買ってくれるのだという発想が根底にある。だが時代は変わった。インドや他のアジア諸国で、高スペックの日本製品は売れない。売れるのは低スペックだが低価格の韓国や中国の製品だ。日本は安くてシンプルがいいというニーズを敏感に察知しなかった。

「おもてなし」も同様だ。本当に顧客はそのサービスを求めているのか。不要な人も多く、必要な人にのみ有料で提供すればよいのではないか。「完璧主義」の反対は「いい加減」「適当」である。サボりではなく、本来の意味である「適正な案配」を重視すべきだ。

【PROFILE】おおた・はじめ/1954年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科修了。京都大学経済学博士。現在、同志社大学政策学部教授。近著に『ムダな仕事が多い職場』(ちくま新書)がある。

※SAPIO 2018年1・2月号

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