同志社大学政策学部教授の太田肇氏


◆「完璧主義」より「いい加減」

 より大きな問題は、これらに費やされる労働力、コストが価格に転嫁されないことだ。労働力が浪費されていると言っていい。浪費されている人件費などのムダを全部集めたらいったい何兆円になるだろうか。

 海外のサービス産業はそこまで丁寧ではないし、ある意味いい加減というか、適当な案配ができている。日本は適当な案配ができずに完璧主義に走っている。

「完璧」と聞くと良いことのように思うかもしれないが、完璧にこだわることで他の価値が犠牲になっていることが多い。それは時間であったり、金銭的なコストだったりする。

 欧米に比べて日本の労働生産性は極端に低い。原因のひとつに、完璧主義で細かいところばかりに目がいって効率化を図れないことがあるのではないか。背景には、旧来の工業社会の考え方がモノ作りだけでなく、サービスを提供する側、受ける側、日本社会全体に浸透していて、時代は変わったのにその考え方からなかなか脱却できないでいることがある。

 高品質のものを作って、スペックを増やせば増やすほど、客は買ってくれるのだという発想が根底にある。だが時代は変わった。インドや他のアジア諸国で、高スペックの日本製品は売れない。売れるのは低スペックだが低価格の韓国や中国の製品だ。日本は安くてシンプルがいいというニーズを敏感に察知しなかった。

「おもてなし」も同様だ。本当に顧客はそのサービスを求めているのか。不要な人も多く、必要な人にのみ有料で提供すればよいのではないか。「完璧主義」の反対は「いい加減」「適当」である。サボりではなく、本来の意味である「適正な案配」を重視すべきだ。

【PROFILE】おおた・はじめ/1954年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科修了。京都大学経済学博士。現在、同志社大学政策学部教授。近著に『ムダな仕事が多い職場』(ちくま新書)がある。

※SAPIO 2018年1・2月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン
佳子さまの“ショッキングピンク”のドレスが話題に(時事通信フォト)
《5万円超の“蛍光ピンク服”》佳子さまがお召しになった“推しブランド”…過去にもロイヤルブルーの “イロチ”ドレス、ブラジル訪問では「カメリアワンピース」が話題に
NEWSポストセブン
「横浜アンパンマンこどもミュージアム」でパパ同士のケンカが拡散された(目撃者提供)
《フル動画入手》アンパンマンショー“パパ同士のケンカ”のきっかけは戦慄の頭突き…目撃者が語る 施設側は「今後もスタッフ一丸となって対応」
NEWSポストセブン
大谷翔平を支え続けた真美子さん
《大谷翔平よりもスゴイ?》真美子さんの完璧“MVP妻”伝説「奥様会へのお土産は1万5000円のケーキ」「パレードでスポンサー企業のペットボトル」…“夫婦でCM共演”への期待も
週刊ポスト
結婚を発表したPerfumeの“あ~ちゃん”こと西脇綾香(時事通信フォト)
「夫婦別姓を日本でも取り入れて」 Perfume・あ〜ちゃん、ポーター創業の“吉田家”入りでファンが思い返した過去発言
NEWSポストセブン
(写真右/Getty Images、左・撮影/横田紋子)
高市早苗首相が異例の“買春行為の罰則化の検討”に言及 世界では“買う側”に罰則を科すのが先進国のスタンダード 日本の法律が抱える構造的な矛盾 
女性セブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
【本人が語った「大事な存在」】水上恒司(26)、初ロマンスは“マギー似”の年上女性 直撃に「別に隠すようなことではないと思うので」と堂々宣言
NEWSポストセブン
劉勁松・中国外務省アジア局長(時事通信フォト)
「普段はそういったことはしない人」中国外交官の“両手ポケットイン”動画が拡散、日本側に「頭下げ」疑惑…中国側の“パフォーマンス”との見方も
NEWSポストセブン
佳子さまの「多幸感メイク」驚きの声(2025年11月9日、写真/JMPA)
《最旬の「多幸感メイク」に驚きの声》佳子さま、“ふわふわ清楚ワンピース”の装いでメイクの印象を一変させていた 美容関係者は「この“すっぴん風”はまさに今季のトレンド」と称賛
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン