そうした文氏の志向は、韓国の行方に大きな影響を与えている。2020年から中学・高校で使用される歴史教科書について、韓国政府が取りまとめた執筆基準試案では、「北朝鮮による朝鮮戦争南侵」や「北朝鮮の世襲体制」「北朝鮮の人権」などの用語が消えることになるという。北朝鮮の体制を問題視しないという表われだ。
さらに、文政権では憲法改正を企図しているが、その改正草案では、現行憲法の国家基本原理の項にある「自由民主的基本秩序」という言葉から「自由」を削除し、「民主的基本秩序」に変えている。自由主義陣営から離脱しようとしているかのようである。
「文大統領は韓国を社会主義体制に近づけて統一を果たそうとしている。しかし、東西冷戦が終結して何十年も経ったのに、今ごろ社会主義をやろうとするなんて、どれだけ時代錯誤なのかと」(前出・前川氏)
ところが文政権の韓国内での支持率は高い。アイスホッケーの南北合同チーム結成で、「国民に相談なく勝手に決めた」「(選手枠の関係で代表から漏れる)選手がかわいそう」と批判を浴びたものの、各社の世論調査では6割前後の支持率をキープしている。
南北統一に関しても、統一研究院が昨年6月に発表した世論調査結果では、「統一が必要」との回答は57.8%に達する。文政権の支持率とほぼ一致しており、国民の多数派が文政権の親北路線を支持しているのは間違いない。国際世論がこれだけ北朝鮮に批判的な今にあってなお、である。
※週刊ポスト2018年3月2日号