本来なら、経団連に加盟している企業は日本の大手優良企業であり、好業績を続けているところも多いのだから、経営陣が率先して高額報酬をもらい、優秀な社員の給料も大幅に引き上げていくべきなのだ。ところが実際は、役員報酬が年間1億円以上になると個別開示が義務付けられているせいか、大半の経営者は年収1億円未満である(※/東京商工リサーチの調査(上場企業2430社が対象)によると、2017年3月期決算で役員報酬1億円以上を得ている役員を個別開示した上場企業は221社で、その人数は457人)。
しかし、世界標準では、大手優良企業の役員報酬は「10億円以上」が当たり前であり、1億円以上の報酬を得ている役員が数百人単位でいる企業も少なくない。日本は高額な役員報酬をもらうとマスコミなどに批判されるため、共産主義国かと見紛うほどの悪しき平等主義に陥っているのだ。
技術者に関しても、ICT(情報通信技術)の優秀な人材は初任給がすでに1000万円を超えている。問題は、日本には同一成果どころか同一労働とさえ言えるレベルのICT技術者が極めて少ない、ということである。未だに大量生産・大量消費時代の給与所得を巡る議論を繰り返している政治家と、それに迎合している経営者たちの感覚は、完全に麻痺している。
人権に関わるブラック企業の問題を除けば、いつからどのように賃金や労働条件を変えるかといった問題は、各企業が業績や事業計画、世界戦略などに基づいて自分たちで決めればよいことだ。それを政府がマイクロ・マネージメントでチマチマと指図するのは、企業をますます弱体化させるだけである。
※週刊ポスト2018年3月9日号