フォトジャーナリストの村山康文氏
市場に隣接する自宅の防空壕の中に、母と弟2人の家族4人で隠れていたという。翌朝7時頃、家を出て市場を訪れたチェンさんが見たのは、犬に食いちぎられて異臭を放つ夥しい数の死体だった。
「ここでは16歳くらいまでの子供たちばかりが52人、殺された。韓国軍が襲って来た時、子供らはこの市場で遊んでいたんだ。一緒にいた大人たちは逃げて助かった。今でも当時の状況を鮮明に覚えている。忘れられない」
チェンさんは30分ほどのインタビュー中、目を真っ赤にし、怒りに全身を震わせながら一つひとつ言葉を絞り出すように語った。
●むらやま・やすふみ/1968年兵庫県生まれ。立命館大学中退後、フォトジャーナリストとして主にベトナム問題を取材。
※SAPIO2018年3・4月号