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ハイスペック男性が求める「プロ妻」になった女子の哲学

 よく港区女子はインスタで、「#今日もありがとう #いつもご馳走さま #感謝 #甘えてばかり #大好き」などというタグとともに、かすかに見切れたスーツ姿の男性と料理を写した写真をアップし、高級レストランに連れて行ってもらったことを匂わせる。「私の彼氏ハイスペなの☆」感を出すのだ。

 しかし、ナナコは「そんな女、バカみたい」と言っていた。内藤と付き合っているなんて誰にも自慢しなかった。たまに、「内藤さんに口説かれてて~」なんて髪の毛をいじくりながらヘラヘラしている港区女子に出くわしたが、仏のような眼差しをしていた。ナナコはそこでも「私ずっと付き合ってるし」などと反論しなかった。

 ナナコの肝の座り方と、飽きない毒舌トーク、そして口の固さが信頼され、付き合いは3年に及んだ。毎晩のように出会いがある内藤にとって、「彼女」なんてドラマ1クール分続けばサヨウナラ。出張があるときに連れて行く新しい女の子が調達できれば良い、というくらいのスタンスで飲み会に参加し続けていたが、ナナコは違った。

 2人は結婚した。ナナコも、内藤の仕事への情熱の深さや、記念日のプレゼントを欠かさないマメなところに惹かれていた。私には「彼は、尊敬できる人なの」と語っていた。

 結婚してからの内藤は、家に帰るのも遅く、たまに休日があっても自分の部屋で仕事に没頭していることが多かった。子供は生まれたが、今は夫婦生活はまったくない。きっとまた華奢な女を毎晩口説いているのだろう。

 生活費は月60万円。家賃光熱費は別。住まいは都心に3LDKの130平米。それでも「愛がなければ夫婦なんてやってられない」という“元港区女子”は多い。もちろん、イクメンなんて夢の夢だ。料理や掃除に文句を言ってくるときもある。

 しかし、ナナコはストレスなどなかった。内藤はきちんと一家の大黒柱の役割を果たしている。それで満足なのだ。高級マンションに生活費の60万。これは何物にもかえがたい。内藤そっくりの子供も可愛い。この生活を守れるなら、多少の問題などへっちゃらである。

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