主な仕事は2つ。車道であるコースに規制線を張り、車が入らないように警備をする「交通警備」と、スタートやフィニッシュなどに集中的に人を配置して雑踏事故が起こらないよう誘導したり、小型カメラを携帯して見守る「雑踏警備」だ。大会当初は、交通規制に対する苦情も多かったという。同財団・経営管理本部長の酒井謙介さんが言う。
「都内の主要道路を交通規制するということで、通行する一般車、タクシー利用者から多くの苦情をいただきました。警視庁にもクレームが多く入ったそうです。とはいえ規制を敷かなければ走れない。丁寧な周知徹底を心がけ、交通規制ができるだけ早く解除されるように設置物の撤去などもすばやくするよう毎年改善を図っています。また、交通警備に当たる警備員にも適切な誘導が行えるよう改善を重ねてきました。回を重ねるに連れ、認知度も上がり、今では大きな混乱はありません」(酒井さん、「」内以下同)
雑踏警備は、2013年に起こったボストンマラソン爆発テロ事件を受けてさらに強化された。
「テロ発生直後、警備を強化するプロジェクトを立ち上げて対策を検討しました。金属探知機と手荷物検査を全員に対して行うことになったのも、2014大会からです。警視庁がランナーと併走しながら警備をするランニングポリスが導入されたのは2015大会から。これまで大きな事故やトラブルはありませんが、警備の強化も抑止力として効果を発揮していると思います」
◆2020年東京五輪の先も東京マラソンは続く
コース変更では前述の通り、ボランティアの増員もされたが、警備もまた拡充されたという。
大会前日には念入りなコースの巡回警備も行い、警視庁は警察犬を出動させ、コース上のマンホールや付近の花壇などを調べて、不審物などの危険がないかをチェック。さらに、地元のことをよく知る町会にも協力を仰ぎ、見守りをお願いしている。マラソンに参加しない人たちの協力も加わり、全ての力が結集して東京マラソンは開催されている。
東京マラソンの成功の先に見えるのが2020年東京五輪。ただ、山本さんは「あくまでも私たちが取り組むのは東京マラソン」と冷静だ。
「東京五輪が終わっても東京マラソンは続きます。もちろん東京マラソンのボランティアメンバーの活躍が東京五輪に生かされればうれしいですが、五輪でさらに多くを吸収し、その先の東京マラソンに還元していきたいですね」
ランナーの活躍、その裏にはボランティアと警備という両輪の力走がある。
※女性セブン2018年4月12日号