「表現というのは表現だけで成立するのではなく、生きているから成立しています。だから、生きているとはどういうことなのかの裏付けが自分自身でなされていなければ、表現にはほんとは繋がらないはずです。そこら辺を無視して、まるで自分の生きている様というのは表現とは別のものだと思いこんでいる人が多いですが、全部ばれてしまうと僕は思います。
今、僕は世間で言う年齢を重ねて、死ぬところに一歩一歩近づいています。その時、この身体が具体的にどう変化していくのかは、まだ未知の領域なわけですよね。僕らダンサーの身体は他の同世代のとは違うかもしれません。でも、特殊だろうがなんだろうが、僕はダンサーという仕事を選んで生きている。この身体と一緒に生きている。その状態を、僕はやめたくないんですよ。これが僕の一番活発でいられる状態ですから。このままプツッと人生が終わるんだったら、そう終わりたい。
ただ、もう一方では違う意識もあります。この身体がどう変化していくのかを、死ぬ直前まで観察してみたい。それが可能な生き方をしていきたい。
ですから、芝居でも死んでいく人をやってみたい。殺される役は多かったですが、そうじゃなくてね。あと三か月で死ぬとか、既にぼけちゃってるとか、そういう具体的にそこに死が待っている役をやりたいです」
●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小社刊)が発売中!
◆撮影/五十嵐美弥
※週刊ポスト2018年4月6日号