芸能

舞踊家・田中泯 死がそこに待っている役をやりたい

俳優としても活躍する舞踊家の田中泯

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、俳優としても活躍する舞踊家の田中泯が、アニメ映画で初めて声のみの出演を体験したこと、『たそがれ清兵衛』(2002年、山田洋次監督)に出演した時に考えたこと、生きることと表現することについて語った言葉をお届けする。

 * * *
 田中泯は舞踊家として身体による表現を追求してきた。が、二〇〇六年、マイケル・アリアス監督のアニメ映画『鉄コン筋クリート』では声のみの出演をしている。

「体験してみたくて引き受けました。スタジオには人がズラッといるのかと思ったら、誰もいませんでした。もう吹き込まれた音が聞こえてきて、その声と映像に向かって喋る。その複雑な立体感覚が面白かったです。

 それから、僕がやるネズミという役のある種のムードをキープするためでしょうか。マイクの前で背中を丸めてそういう体になって声を出していました。そしたら監督も『聞こえてきた、聞こえてきた!』と言ってくれて、とても楽しい経験でした。

『たそがれ清兵衛』の時も、最初に考えたのは『どんな身体でやったらいいんだろう』ということでした。僕は技術のない人間です。技術というのは、一つのことを体験する時に発見できるものですが、僕は次の仕事をする時に前の仕事で見つけた技術を寄る辺にする気はありません。それじゃなきゃ、もう五十年以上も『おどり』に関わってきた甲斐がありませんから。

 僕の場合、相手の身体と会うまでは何も決めません。どこまでも言葉を発しているのは身体です。目には見えませんが、出した声は相手の耳に入って脳に伝わり、思考が生まれる。お芝居というのはそれを具体化する仕事だと思いますし、自分ではいつもそれを心がけています」

 インタビューを通じて感じることができたのは、田中が「表現すること」を自身が「生きること」そのものと密接なものとして捉えながらこれまで過ごしてきたということだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

シーズンオフをゆったりと過ごすはずの別荘は訴訟騒動となっている(時事通信フォト)
《真美子さんとの屋外プール時間も》大谷翔平のハワイ別荘騒動で…失われ続ける愛妻との「思い出の場所」
NEWSポストセブン
選手会長としてリーグ優勝に導いた中野拓夢(時事通信フォト)
《3歳年上のインスタグラマー妻》阪神・中野拓夢の活躍支えた“姑直伝の芋煮”…日本シリーズに向けて深まる夫婦の絆
NEWSポストセブン
学校側は寮内で何が起こったか説明する様子は無かったという
《前寮長が生徒3人への傷害容疑で書類送検》「今日中に殺すからな」ゴルフの名門・沖学園に激震、被害生徒らがコメント「厳罰を受けてほしい」
パリで行われた記者会見(1996年、時事通信フォト)
《マイケル没後16年》「僕だけしか知らないマイケル・ジャクソン」あのキング・オブ・ポップと過ごした60分間を初告白!
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
『東京2025世界陸上』でスペシャルアンバサダーを務める織田裕二
《テレビ関係者が熱視線》『世界陸上』再登板で変わる織田裕二、バラエティで見せる“嘘がないリアクション” 『踊る』続編も控え、再注目の存在に 
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビーカーショットの初孫に初コメント》小室圭さんは「あなたにふさわしい人」…秋篠宮妃紀子さまが”木香薔薇”に隠した眞子さんへのメッセージ 圭さんは「あなたにふさわしい人」
NEWSポストセブン
試練を迎えた大谷翔平と真美子夫人 (写真/共同通信社)
《大谷翔平、結婚2年目の試練》信頼する代理人が提訴され強いショックを受けた真美子さん 育児に戸惑いチームの夫人会も不参加で孤独感 
女性セブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン
石橋貴明の現在(2025年8月)
《ホッソリ姿の現在》石橋貴明(63)が前向きにがん闘病…『細かすぎて』放送見送りのウラで周囲が感じた“復帰意欲”
NEWSポストセブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
「ずっと覚えているんだろうなって…」坂口健太郎と熱愛発覚の永野芽郁、かつて匂わせていた“ゼロ距離”ムーブ
NEWSポストセブン
新潟県小千谷市を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA) 
《初めての新潟でスマイル》愛子さま、新潟県中越地震の被災地を訪問 癒やしの笑顔で住民と交流、熱心に防災を学ぶお姿も 
女性セブン