ライフ

日本初「CAR-T細胞療法」が特許出願され薬価も半分以下に

CAR-T細胞療法を医師が解説

 CAR(キメラ抗原受容体)-T細胞療法は患者自身の免疫細胞の一種であるT細胞に、白血病細胞の表面にある抗原を認識するモノクローナル抗体を合体させ体内に戻し、がんを攻撃する治療だ。アメリカや中国など、この治療をリードする国々では細胞作製に際し、ウイルスを使うウイルスベクター方式をとっている。

 このメカニズムの薬(商品名:キムリア)が昨年、アメリカで保険承認された。価格は約5300万円で、さらに入院や検査費用などを含めると、かなり高額な治療費がかかることが話題となっている。

 そこでウイルスを使用するのではなく、酵素を使ってモノクローナル抗体の遺伝子をT細胞に組み込む酵素ベクター方式のCAR-T細胞を名古屋大学と信州大学が共同で開発した。名古屋大学大学院医学研究科小児科学の高橋義行教授に話を聞いた。

「アオムシ(蛾の幼虫)から遺伝子の組み換えができる酵素が見つかり、2004年に人間の細胞でも使えることが報告されました。信州大学の中沢洋三教授がアメリカ留学中に、ウイルスベクター方式よりコストが安い酵素ベクター法でもCAR-T細胞ができることを発見し、論文を発表しました。帰国後は私たちと共同研究、効率よく作製する方法を日本と海外で特許出願しました」

 作製には、まず成分献血の要領で患者の血液からリンパ球を遠心分離で集める。組み込む遺伝子を入れたベクターと酵素ベクターの2種類をあらかじめ作っておき、患者のリンパ球と一緒にして電気パルスをかけるとCAR-T細胞ができる。当初の検討ではリンパ球の5~10%程度しか遺伝子を組み込むことができなかった。ウイルスベクター方式では50~60%のCAR-T細胞ができるので製造効率が悪い。そのため作製方法を改良、現在は50%以上のCAR-T細胞作製が可能になっている。製造コストはウイルスベクター方式よりも半分以下にダウン可能だ。

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン