「退店してくださいとキッパリ言えないから仕方なく会話を続けるのですが、それが相手を勘違いさせているのかも……」
当初は、シフトに入る時間や日程を変更して何とかやり過ごしていたが、ついに我慢ができず、別の店舗に逃げるように異動した。ある日、いつものようにやってきた男性客が、胸ポケットにスマホを、紙袋にはデジタルカメラを忍ばせているのを発見し、警備員に報告。警察沙汰になって、男から”報復を受けるかもしれない”と感じたからだ。
「商品の説明をしているときに、ふと足元を見ると、床に置かれた紙袋の隙間にレンズが見えました。店長にその場で相談し、すぐ警備員を呼びました。男性はもう二度と店に来ない、と警察に話したようですが、とにかく怖くて…。遠く離れた店舗に異動願を出しました。」
筆者も女性向け雑誌編集者だったころに、女性向けアパレル店が入る東京・渋谷の有名ビルの店員、ビル運営者から同様の報告を幾度となく聞いていた。相手が店員で何もしてこない、断りづらいという関係性を悪用し、むやみやたらに話しかけたり前述のように盗撮したり、さらに盗撮した写真や動画がネットで販売されていることだってあった。
単なる変態趣味であるだけでなく、被害女性の写真や動画を使って「金儲け」までしてしまおうとするその思考には反吐が出る思いであるが、これが現実であり、今なおこうした野蛮な行為に手を染める連中がいる。主に性犯罪事件を担当する警視庁関係者も、次のように漏らす。
「金になるから、といって男性から依頼された女性が盗撮するパターンもある。過去には、報酬を受け取った女性店員が更衣室内を撮影していたことが発覚し摘発された事例もある。セクシャルな事件には様々な形があり、事件化したときに唖然とするような手法が用いられることが多くなってきている」
触らない痴漢がある──。
男性である筆者も、こうした指摘を受けギョッとし、そして腹が立った。女が一方的に不快と言えば、男は何もできなくなるじゃないか……と。しかし「新しい痴漢」は確実に存在し、様々な手法でもって女性にセクハラを働く男も減らない。「俺は違う」「男がみんなそうではない」と思うのなら、そうした卑劣な連中を、男性自身が厳しく追及していくほかないのだ。