たとえば、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)の著者、田中道昭氏は自著の中で〈アマゾンに抵抗しようと思うなら、尖った商品やアマゾンにはない楽しさや情緒価値で勝負することが肝要〉と記し、その代表事例として、フリーマーケットアプリで知られる「メルカリ」を挙げている。つまり消費者対消費者取引のC2Cだ。
「メルカリ」などのフリマ市場といえば、衣料品も雑貨も中古品で良しとし、何でもシェアリングすることに抵抗感が少ない若年層がほとんどかと思いきや、そうでもない。シニア層の主婦Aさんはこう言う。
「ハンドメイドのECマーケットで『minne』というアクセサリーや生活雑貨を扱うサイト(運営は上場会社のGMOペパボ)があって、一般の人が手作りで作ったものとは思えないアクセサリーが、驚くほどリーズナブルに買えるので、楽しみながらサイトを見て買い物をしています」
こうしたC2Cマーケットは、いまのアマゾンでは提供できていない、尖った価値ともいえる。さらに、情緒価値という部分でも活路はある。前述したアスクルは毎年、ネット通販サイトLOHACOの商品展示会を開催しているが、同展示会では多くの大手メーカーと組んで開発した“デザイン商品”を紹介している。
たとえば、花王の消臭剤などトイレタリー製品は当然、アマゾンでも買えるものだが、トイレ、あるいは洗面所に置いても目立たず、それでいて周囲のインテリアに溶け込むような、おしゃれで清潔感のあるデザインパッケージをアスクルとメーカーとで共同開発し、LOHACOで販売している。通常のメーカー商品よりも2割ほど割高にはなるが、特に女性からの支持が厚いようで売り上げもいいという。
こうした共同開発スタイルも、アマゾンではなかなか真似ができない。
もうひとつ、尖った商品や情緒価値以外にもアマゾンの死角はある。アマゾンの特徴は、大量の「単品」を揃えて素早く配送することにあるため、独特の世界観を持った企業なら、アマゾンでも簡単には席巻できないはず。その代表例が、無印良品を展開する良品計画だ。同社の金井政明会長は以前、こう語っていた。