「『痛み』は、加齢によるものばかりとは限らない。重篤な病の初期症状である可能性も十分に考えられます。そのため、些細な痛みであっても医師の診療を受けることをためらってはいけません。
ただ、大事になるのは『医師に痛みをどう伝えるか』です。医師はまず問診で患者から『痛み』について訊ね、それを診断の重要な判断材料にする。同じ部位の痛みであっても、その『痛み方』によって診断結果が変わってくる。そのため、より正確に痛みの特徴を伝えてもらえると、医師は原因を推測しやすくなります。
ただし、その際に『すごく痛い』『これまでないほど痛い』など、本人にしかわからない主観的な表現をされてしまうと、正確な診断ができない可能性があるのです」
痛みを伝える際に、意外にも効果的なのが「擬態語」だ。きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師は、患者の「痛み表現」を、診断の重要な指針にしている。
「たとえば“ピリピリ”“ビリビリ”と告げられた場合、腫瘍の存在などで神経が圧迫・刺激されている可能性を疑います。また“ズキズキ”という痛みなら、炎症が起きている可能性を考える。“ズンズン”とか“ズーン”という鈍痛の表現なら、痛みの原因となる異変が体内の深い場所、特に内臓に原因があるのかもしれない。正確な診断はその後の検査に頼る必要がありますが、初期の診察では大きな判断材料になる」(菊池医師)
◆破裂直前の動脈瘤を発見
痛みを正確に伝えたことで、大事を免れることができたケースは少なくない。深刻な腰痛に悩まされていた、関西在住の70代男性・Aさん。ぎっくり腰を疑って整形外科を受診、医師から痛み止めを処方され、経過観察をすることになった。