「痛み」は体の不調を察知する最初の信号であり、それを正確に伝えることが、その後の診断に大きく影響する。痛みを伝える際に、意外にも効果的なのが「擬態語」だ。きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師は、患者の「痛み表現」を、診断の重要な指針にしている。
「たとえば“ピリピリ”“ビリビリ”と告げられた場合、腫瘍の存在などで神経が圧迫・刺激されている可能性を疑います。
また“ズキズキ”という痛みなら、炎症が起きている可能性を考える。“ズンズン”とか“ズーン”という鈍痛の表現なら、痛みの原因となる異変が体内の深い場所、特に内臓に原因があるのかもしれない。正確な診断はその後の検査に頼る必要がありますが、初期の診察では大きな判断材料になる」(菊池医師)
大分大学医学部の服部政治・助手(2006年当時)が著わした論文によれば、65~74歳の18.4%が体のどこかに慢性的な痛みを感じており、75歳以上になると36.7%にはね上がるという。この論文データによれば、慢性的な痛みを抱える60歳以上の58.6%が「背中下部(腰部)」の痛みに悩まされているという。
その多くはぎっくり腰(腰椎捻挫)や座骨神経痛によるもの。多くの中高年に取材したところ、「骨盤付近が“ピリピリ”“ジンジン”と痛む」と表現する場合が多かった。前出・菊池医師がいう。
「これらは体を動かしたときに生じるという特徴があります。逆にいえば、運動や姿勢にかかわらず腰周りが痛む場合は、内臓疾患の可能性が疑われます」
腹部大動脈瘤をぎっくり腰と勘違いする例もあるが、他にも普通の腰痛と間違えやすい病気がある。代表的なのは尿管結石だ。