芸能

中谷美紀 「主婦のガス抜きドラマ」で見せる新境地

主婦たちの声が続々寄せられている(番組公式HPより)

 視聴者の反応は即座に響いてくる時代。ならばそれを生かさない手はない、というスタンスでつくられた作品もある。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 続々とスタートしている春ドラマ。ずらり話題作が並びますが、まずは女性視聴者の心に火を点ける、明確な「狙い」を持った作品に注目。

『あなたには帰る家がある』(TBS系金曜午後10時)は、「妻の本音」を反映したドラマ作りを目指し、事前に100人以上の人にリサーチをかけ、夫について、子育てについて、仕事と家事の両立について徹底調査したとか。夫婦あるあるネタを盛り込んだ、と宣言するだけあって、たしかにセリフ一つ一つが妙に生々しくてリアル。

 事前調査だけではありません。

 番組の公式サイトに視聴者書き込みコーナーが準備され、そのネーミングが「あなたには語る場所がある」。ドラマタイトルをもじったシャレ感満載。

 ドラマの舞台は……結婚13年目の夫婦の日常。主人公は職場復帰したばかりの真弓(中谷美紀)。一人娘は中学生になり手が離れたタイミング。今後自分はどう生きるのかを考え、以前の職場・旅行代理店の仕事に戻ることに。一方、夫の秀明(玉木宏)は、妻の復帰にはさほど協力もせず深く理解もせず。そして、営業先の顧客妻の色香に引き寄せられ……友達ノリ夫婦の倦怠は大きなズレと溝に直面しています。

 いわゆる「ワンオペ」の憤怒爆発。共働きなのにろくに家事もしない夫に対して、「お互い仕事して疲れているのに、なんで先に帰ったら洗濯物取り込もうとか食器ぐらい下げるとかできないわけ?」「ゴミ出したくらいで家事やってるつもり?」

 中谷さんが吐き出す悲鳴にも似た台詞。100人リサーチが効いているのでしょうか、ド迫力。「ガス抜きドラマ」という新たなジャンル確立? 

 ドラマの狙うところは女性視聴者の「共感」。でも、「見ていてリアルすぎてつらい」「メンタルに響きそうだからこのドラマは見ないつもりでいたが、テレビをつけたらつい見入ってしまった」という声も聞かれます。「共感」の域を超えたちょっとアブナい刺激にもなりそう。

「せっかく封印し我慢して家事しているのに夫婦一緒に見たら危険」という声もある。

 真弓が語るのは、多くの「妻」が共感するセリフの数々。けれどそれは同時に、口に出したら終わりというファイナルワードでもある。だからみんなぐっと我慢してきた。そうした「暗黙の了解事項」に、このドラマは手を突っ込み火を点ける……?

 投稿コーナー「あなたには語る場所がある」を恐る恐る覗いてみると、「私は家政婦でもないし、酒の肴を作る飲み屋のおかみじゃねー」「夫はATMと思って我慢している」「旦那の洋服、下着は雑巾と一緒に洗う」など、ヒリヒリするような言葉が並んでいます。

 このドラマが視聴者にとってガス抜き効果となるのか、あるいは寝た子を起こすヤバい刺激となるのか。いずれにしても、視聴者の反応を引き出したという意味では、制作陣の狙い的中でしょう。

 主演・中谷美紀さんの「主婦ぶり」も見所の一つです。

 実は当初、中谷さんが主婦役とは何かしっくりこないなと思ったのですが、ドラマが始まってみると、その奮闘ぶりから「新境地を開こう」という役者魂のようなものも伝わってきます。

「私は行かず後家と言われて久しいのですが、真弓を演じれば演じるほど、もともとなかった結婚願望がさらになくなっていきそう」と中谷さんご本人も自虐的にコメントしているほど腰が据わっている。つまり、自分は「主婦」というものに対して幻想も無ければフィットもしないけれど、いったいどれくらいまで成り切れるのか挑戦したい、そんな強い意欲を感じます。

関連記事

トピックス

初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン