だが、トランプがそれで“折伏”されたのかどうかさだかでない。いまは会談の行方を注視し、和戦が逆転する事態にも備えておかなくてはならない。
米朝に戦端が開かれれば、日本は安全保障上の重大な危機を迎える。
米朝関係が破綻しても、南北関係が直ちに悪化するかわからない。先制攻撃を受けた北朝鮮が韓国ではなく日本を標的に中距離、短距離ミサイルを発射する可能性にも備えておくべきだ。
日本への脅威はミサイルだけではない。日本国内にテロリストを送り込み、重要インフラを破壊したり、貯水池へ細菌兵器を散布するなど、少数のテロリストが甚大な損害を巻き起こす最悪の事態にも備えておくべきだろう。
流暢な日本語を操る北朝鮮工作員ならば日本社会に浸透することは十分可能だ。アルカイダのテロリストが日本で活動するのとは事情が異なる。日本の警備公安警察は、スリーパーセル(潜伏工作員)が日本国内に浸透していないか、警戒を強めている。
日本の弱みは人的情報。平壌に在外公館を持っていないこともあって北朝鮮への「ヒューミント(人による情報収集活動)」が手薄なのである。
一方で北朝鮮のインテリジェンス能力は侮れない。平昌五輪に妹の金与正を送り込み、ペンス米副大統領との会談を打診して、巧みな瀬踏みを繰り広げた。その後も、南北会談、米朝会談をセットし、さらには金正恩が北京を電撃訪問し、対ロ外交も活発に展開して、対北包囲網を打ち破ろうとしている。