逆に挨拶がきちんとできる人は撮影もスムーズだったという。
「その点で特に印象深いのは黒木瞳さん。礼儀正しくスタジオに入られる様が今でも思い出されます。宝塚歌劇団の皆さんは見事でした。背筋を伸ばして隊列を組み、タッタッと足並み揃えるようにして来られました」(上野氏)
ちなみに宝塚歌劇団の男役で人気を博した越路吹雪のことはこう振り返っている。
「女ってのを超えてるところがあるね。色っぽいとかそんなんじゃない。すごく人間のスケールが大きかった。楽しい人でしたよ。写真は撮りにくかったね」(著書から)
2003年で急逝するまで、女性の自然な姿を引き出す姿勢を貫いた。
「女よ、より美しくあれと願って、シャッターを押し続けた」(同前)
その軌跡は、日本の写真界の歴史に燦然と刻まれている。
(文中一部敬称略)
※週刊ポスト2018年5月4・11日号