◆葬儀社スタッフも手伝う
横浜市内にある「研究所」に運ばれてくる“患者”は遺体だけだ。朝7時頃から建物の前には葬儀社の車が並び、「研究所」に遺体が運ばれる。「鑑識」と書かれたジャンパーを着ている警察官も頻繁に出入りしている。「研究所」に遺体を搬送し、解剖の現場にも立ち会ったことがある川崎市内の葬儀社関係者は、こう証言する。
「臓器や脳を次々と取り出して容器に入れ、重さを測り終えると、再び体の中に流し込んで縫う。この一連の作業を医師と助手が猛スピードで行なうのです。1体につき20分ほどだったと思います」
葬儀社のスタッフが解剖を手伝うこともあるという。
「研究所内には解剖台が5つあり、ご遺体が“切られた”状態で並んでいます。ある葬儀社の社員が、容器に入った内臓を洗う手伝いをして、さらに解剖後、慣れた手付きでご遺体を縫っているのを見たことがあります」(横浜市の葬儀社社員)
法医学関係者が問題視しているのはそうした“解剖数”の多さだけではない。承諾解剖の費用が遺族に請求されている点だ。日本法医学会理事長を務める名古屋市立大学教授の青木康博氏が言う。
「全国的に承諾解剖は公費で賄われており、遺族から解剖費を徴収するのは神奈川県だけ。1人の医師が多くの解剖を請け負うという構図も歪です。この問題をどう改善すべきかは、これまで学会などでも議論されてきましたが、いまだ解決されていません」