今作でも、やくざ役に初挑戦した江口が実にはまっていた。その感想を伝えると、目尻を下げて深く頷き、
「ふふ。俳優をやっている人なんてのは根が不良ですから。こういうのはみんなね、生き生きするんです」
と楽しげに呟いた。そこには作品への、そして映画への愛が滲んでいた。
●やくしょ・こうじ/1956年1月1日、長崎県出身。1996年に『Shall we ダンス?』『眠る男』『シャブ極道』で14の国内映画賞で主演男優賞を独占する。『SAYURI』(2005年)、『バベル』(2006年)などハリウッド作品にも出演する他、2014年の『渇き。』ではスペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭で日本人初の最優秀男優賞を受賞、2017年にはシンガポール国際映画祭でシネマ・レジェンド賞を受賞するなど、海外でも高く評価される。2009年に『ガマの油』で初監督。2012年に紫綬褒章を受章。公開中の『孤狼の血』で主演を務める。
■撮影/江森康之、取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2018年5月25日号