男たちの荒ぶり、バイオレンス、エロス。そしてやくざ映画には欠かせない、人情も大切に描かれている。
「不器用な大上は常軌を逸した手荒な方法でしか呉原の平和を守れなかったんでしょうけれど、その素顔は市民を守ろうとただ一心に働いている天使のような男。情報屋のおばあちゃんにやくざからせしめた金を握らせて、去り際にふと『元気でおりんさいよ』と声をかけるような、心根のやさしい男なんです。それなのに一見すると悪徳警官で、情の深さが透けて見えない。そこが彼の憎めないところです」
カタギを守る、弱き者の命を守るという揺るぎない信条で、暴力団組織とぎりぎりの攻防を繰り広げる大上。
「組のメンツをかけて敵対先に“戦争”を仕掛けると血気盛んになる若頭(江口洋介)に『若いやつの命を守るのがわれの役目じゃろうが!』と詰め寄る場面も、大上の人間性が感じられて印象深かった。
呉でロケをしたので背景の港には潜水艦などがあって、海軍の街として水兵さんたちが今もたくさん歩いている。そんな街並みで“若者の命を守る”という言葉をかけたことにも、不思議な縁を感じましたね」
大上の生き様は役者としても、同じ男としても魅力を感じると語る。
「男たちが己の正義で命を燃やす姿に見ているほうも熱くなる。映画館を出る時にちょっと強くなったような気分になっていきがる男を、『バカだねぇ』と女性が笑ってくれたら、大成功じゃないでしょうか(笑い)。
近頃は世界中でコミック原作やロボットものが主流になって、映画の俳優さんたちがテレビへ向かって演じている。でもこういう心持ちの映画を面白がってくれる若い俳優さんたちも、いっぱいいると思います。韓国映画に負けないようにぜひもう一度、このジャンルを日本映画の十八番にしてほしいと願います」