国内

中高年ひきこもりの実態調査が極めて困難な理由

ひきこもりの長期化、高齢化に対応できるのか

 学校にも行かず、仕事にもつかず、病気でもないが、6か月以上家を出ない社会的ひきこもり。あまりに人数が多いため「ひきこもり」という言葉だけで、その様子を意味するようになった。増える大人のひきこもり問題について、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 政府が初めて「中高年世代のひきこもり」について、実態調査に乗り出すと発表した。早ければ今年の秋から、40代~60歳前後までの約五千人の中高年ひきこもり者とその家族を訪問し、原因や期間などの聞き取り調査を実施するのだという。

 ひきこもりといえば、主に10代から20代の若者が「陥ってしまう」というイメージが強い。しかし現在では、かつて若かったひきこもり者が十年二十年と続けたことで、三十~四十代のひきこもりが大勢、生み出されている。内閣府が2015年に調査した結果によれば、15歳から39歳のひきこもりは推計値で54万1千人と、前回調査の2010年に比べて減少傾向にあるものの、ひきこもりの期間が「7年以上」と答えた人は増加しているという。

「若者のひきこもりは、親や学校、地域が把握していることもあってか、まだ社会とのつながりがある。問題は、何十年も引きこもったまま、親が高齢になり自分も年を取って、家ごと社会から断絶されるパターンです。もはや社会復帰の可能性はゼロで、ひきこもりの人そのものが社会から”いないこと”にされる。すでにそういう人が多く存在していて、今更調査に乗り出したところで、その実態を正確に調査できるのか疑問です」

 大手新聞社に所属し、ひきこもり問題について長年取材を続けてきた記者は、政府が「中高年のひきこもり問題」についての調査に乗り出したことを「あまりに遅すぎる」と指摘する。記者が語るような「いないこと」にされているひきこもり歴20年超の40代男性・Aさんが住んでいるという、千葉県某市の自宅を訪ねると、母親である70代の女性・Bさんが取材に応じた。

「あの子は働けません。おそらく障害があるんです。でも障害者としては認定されないしね……。私もあと何年生きられるかわからない。お父さん(A氏の父親、故人)が残してくれたお金があるからいいけど、あの子があと何年生きられるのか。私が死ぬとき、あの子も一緒に死んでくれるのが一番、他人様に迷惑をかけずに済むかもしれないけれど……」

関連キーワード

関連記事

トピックス

イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
川崎春花
【トリプルボギー不倫の余波】日本女子プロ2022年覇者の川崎春花が予選落ち 不倫騒動後は調子が上向かず、今季はトップ10入り1試合のみ「マイナスばかりの関係だった」の評価も
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
「中野駅前大盆踊り大会」前夜祭でのイベント「ピンク盆踊り
《中野区長が「ピンク盆踊り」に抗議》「マジックミラー号」の前で記念撮影する…“過激”イベントの一部始終
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
『東宝シンデレラ』オーディション出身者の魅力を山田美保子さんが語ります
《第1回グランプリは沢口靖子》浜辺美波、上白石姉妹、長澤まさみ…輝き続ける『東宝シンデレラ』オーディション出身者たちは「強さも兼ね備えている」
女性セブン
9月6日から8日の3日間、新潟県に滞在された愛子さま(写真は9月11日、秋篠宮妃紀子さまにお祝いのあいさつをするため、秋篠宮邸のある赤坂御用地に入られる様子・時事通信フォト)
《ますます雅子さまに似て…》愛子さま「あえて眉山を作らずハの字に落ちる眉」「頬の高い位置にピンクのチーク」専門家が単独公務でのメイクを絶賛 気品漂う“大人の横顔”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
シーズンオフをゆったりと過ごすはずの別荘は訴訟騒動となっている(時事通信フォト)
《真美子さんとの屋外プール時間も》大谷翔平のハワイ別荘騒動で…失われ続ける愛妻との「思い出の場所」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン
川崎春花
【トリプルボギー不倫の余波】日本女子プロ2022年覇者の川崎春花が予選落ち 不倫騒動後は調子が上向かず、今季はトップ10入り1試合のみ「マイナスばかりの関係だった」の評価も
NEWSポストセブン