◆カネやんの目が真っ赤
野次はすべて即興。選手の動きやその場の状況に応じて、頭に浮かんだものをおもしろおかしく言葉にするのだという。
「豚まんの野次も、551蓬莱で買った豚まんを大阪球場で食べようと買ってきたら、たまたま打席に立っていたのが門田だった。それで声を掛けたら反応してくれた。パ・リーグには石毛(宏典)や落合(博満)など野次に結構応えてくれる選手が多かった。カネやん(金田正一監督)は野次ると目を真っ赤にして怒ってましたわ(笑い)」
1978年の日本シリーズで上田利治監督が打球の判定で抗議した時は、ヤクルトファンと口論になって、警察まで連行されたことがある。
「警察から戻ってきても抗議が続いていたのには驚いた。上田監督の執念に圧倒され、その時は野次るのを忘れてましたわ」
阪急が身売りした1988年には、発表前にオーナーから本社へ呼ばれたという。
「表彰されるのかと思ったら身売りやといわれた。ショックでね。3日間失踪騒ぎを起こしてしまった。そのシーズンの最終戦で応援団は解散しました」
今でもたまにオリックスの試合を観戦している。だが、もう自慢のダミ声を響かせることはない。
■取材・文/鵜飼克郎
※週刊ポスト2018年6月1日号