「永六輔さんは全国各地に友人やファンがおられましたが、地方へ出かける列車や駅のホームで出会う時はいつもひとり。そんなところでベタベタするのは避けたかったので、軽く会釈をしてすれ違いました。立川談志さんも新幹線などでお目にかかる時はいつもひとりでした。素敵な方は、たいてい孤独な時間を大事にしていらっしゃる。私は『孤独の“孤”は個性の“個”』と常々いっています。孤独な時間を大事にできる人だけが、本物の個性を育てられるのです。
孤独を受け入れることは“本来の自分”を取り戻すこと。特にこれまで会社勤めをしてきた人は、組織の中にいたことで目が他人にばかり向いていたのではないでしょうか。そういった人は、外から何かを取り入れ、外に合わせて生きる力がある人です。その力を、これからは内面に向けていけば、自分自身をよく知ることができるようになる。それはものすごく楽しい時間です」
組織や社会に縛られなくなったリタイア後だからこそ、人間の“地力”が試されるのだ。『孤独のすすめ』を著わした五木寛之氏はこう語る。
「孤独は人間の宿命です。老いれば誰でも孤独になる。孫に囲まれていても孤独は孤独。『トゥゲザー・アンド・アローン』ということです。もしそこに楽しみや安らぎを求めるとしたら“耐えることを楽しむ”しかないのではないか。フィジカルには限界がある。老いを楽しむというのは、美辞麗句。思考と回想の世界の中に喜びもある。あえて絆を求めない覚悟から『おのずと見えてくるもの』があるのでは、と思います」
※週刊ポスト2018年6月1日号