危ないと判断し、自動搬送機械を使わない納骨堂を建てた寺も少なくない。早稲田の真宗大谷派・龍善寺が設けた「早稲田納骨堂」は、見た目には自動搬送式に似た参拝室が並ぶが、遺骨は運ばれて来ない。壁面の大型モニターに故人の思い出の写真などが映し出される中、阿弥陀如来に向かって手を合わせる。家族で48万円~と安価だ。
青山の臨済宗・実相寺「青山霊廟」には、仏壇型とロッカー型の墓がずらり。どちらにも、遺骨も位牌も思い出の品も入れられるため、「家に仏壇を置く必要がなくなり、弔いの場所を一本化した」との声も聞く。仏壇型200万円~、ロッカー型50万円~。
◆納骨堂の“流行”シフトあるか
末寺ばかりか、浄土真宗本願寺派直轄寺院の築地本願寺にも、昨年11月、大規模な納骨堂が開設された。「個人的には、自動搬送式も悪くないとも感じましたが、浄土真宗は遺骨を拝んで意味があるという宗教ではないので、導入しませんでした。亡くなったら、阿弥陀如来のお慈悲によって生まれ変わって、浄土で仏様になるというのが教えの根本ですから」と、宗務長の安永雄玄さんが言う。
築地本願寺の納骨堂は、個別の墓の形ではなく「合同墓」の形だ。ここです、と案内されたのは芝生に面した40平方メートルほどの礼拝堂。正面に安置された阿弥陀如来に手を合わせ、ふと目を上にやると、天窓から豪壮な本堂が見えた。阿弥陀如来の足元の地下部分と、そこから続く芝生の下が、遺骨を納めるスペースなのである。
「個別区画」と「合同区画」を合わせて約5万人分。どちらも粉状にして嵩を小さくし、一体ずつ専用の袋に入れられる。その袋をさらに骨箱(アルミ製のケース)に入れて棚に並べられるのが個別区画、袋のままで前後左右のものと“袖すり合う”形になるのが合同区画だそうだ。初めから合同区画を選ぶと30万円、6年間個別区画なら50万円、32年間個別区画なら100万円。すでに千数百人が契約した。週3回開く説明会は1カ月先まで予約が取れないという盛況ぶりだ。