かねてより、小美玉市や周辺自治体からはTXの延伸要望が繰り返し出されていた。しかし、茨城県や県都・水戸市の反応は鈍く、小美玉市は業を煮やしていた。そうした背景から、市議や県議の有志が自力で期成同盟会を立ち上げることになった。
しかし、ここで疑問が沸く。茨城空港はTXより常磐線の方が近い。茨城空港に鉄道を引っ張るなら、常磐線の方が建設費や用地買収などの手間も短くて済み、理解は得られやすいだろう。なぜ、TXなのか?
「現在、茨城県は人口減少が顕著で、そうした傾向は県都・水戸市や企業城下町として栄えた日立市なども見られます。そうした中、つくば市は今も人口が増加傾向で、産業的にも活気づいています。また、国の研究機関もたくさん立地していることも魅力です。つまり、街に勢いがあるんです。茨城空港までのアクセスに、常磐線ではなくTXの延伸を要望している理由は、つくば市のような勢いのある街と結節するという狙いも含まれています」(同)
また、茨城県はTXを運行する首都圏新都市鉄道株式会社に多額の出資をしている大株主でもあり、沿線の市町村もTXの株主として名を連ねている。そうした事情から、JRが運行している常磐線より、TXに要望を出しやすいという心理的なハードルの低さもある。
TXを茨城空港まで延伸させるには、ルートの選定や建設費の概算なども必要になる。期成同盟会は立ち上がったばかりで、そうした細かいシミュレーションはこれからだ。
小美玉市は人口がわずか5万人という小さな自治体で、期成同盟会を一緒に立ち上げたほかの6市も決して大きな自治体とは言えない。そんな小さな自治体の市議たちが、一致団結して県を、そして国を動かそうとしている。
TXの茨城空港までの延伸は、単に茨城県だけの話ではない。訪日外国人観光客の増加という我が国の観光政策や航空政策、ひいては日本経済全体の成長戦略や今後を左右する話でもある。