ビジネス

つくばエクスプレスの茨城空港延伸計画 その狙いとは

北千住付近を走るつくばエクスプレス

 世界から首都圏への玄関口としては、成田空港と羽田空港以外に、成田から少し北にある茨城空港がある。ところが、都内への移動は、3時間に1本程度の連絡バス頼りで弱々しい。鉄道のアクセスをよくしようと、つくばエクスプレスを茨城空港へ延伸を目指す動きが始まった。ライターの小川裕夫氏が、その狙いと、なぜつくばエクスプレスなのかについてレポートする。

 * * *
 訪日外国人観光客の増加が止まらない。当初、政府は2020年に年間2000万人という目標を掲げていたが、ビザの緩和や円安を追い風に、想定を上回るペースで達成した。先般、政府は2020年の目標を3000万人に上方修正。それも軽々クリアするとの予測が強まると、年間4000万人に再修正している。

 人口減少で内需の先細りが確実視される中、年間4000万人もの訪日外国人観光客は日本経済を下支えする心強い“お客さん”でもある。

 迎え入れる日本側には、課題が残されている。

 多言語化やイスラム教徒に対するハラール対応といったソフト面の問題もあるが、なによりもハード面の観光インフラが脆弱なままだ。

 6月15日から施行される住宅宿泊事業法は民泊を全国的に解禁するものだが、この法律が制定された背景も増加する観光客に対して宿泊インフラの整備が追いついていないからだ。

 同様に、交通インフラの整備も追いついていない。

 羽田・成田の航空需要が増大したことで、東京圏の上空は航空機による渋滞が慢性化。そのため、羽田や成田がターミナルや滑走路を増設しても意味がなく、飛行機の発着回数を増やせない状態にある。

 国土交通省航空局は、羽田・成田で起きている空の渋滞を緩和するべく、航空機の進入経路の変更などで対応してきた。しかし、小手先のテクニックでは、抜本的な解決は望めない。そこで、羽田・成田と干渉しない、東京から近い第3の空港の整備が焦眉の課題になっている。

 現在、東海道新幹線のトンネルの真上にあってアクセス良好の静岡空港と茨城県小美玉市にある茨城空港が有力候補として浮上している。しかし、どちらの空港にも一長一短があり、簡単には第3空港を決めるのは難しい。

 静岡空港の場合、JR東海は静岡県にある6駅すべてを通過する「のぞみ」にリソースを傾注している。そのため、静岡駅に停車する新幹線の本数は少なく、まして「のぞみ」は一本も停車しない。静岡県は静岡空港の真下を通る新幹線に着目し、空港直結の新幹線新駅を開設するように要望している。しかし、東海道新幹線の現行ダイヤは過密なので、新駅を設置する余裕はなく、JR東海の対応はそっけない。

 しかし、中央リニアが開業すれば、話は変わってくる。中央リニアが東京―名古屋間を結ぶようになれば、東海道新幹線のダイヤに余裕が生まれる。「のぞみ」の発着本数は減少するので、空いたリソースは「こだま」や「ひかり」に振り分けられるだろう。静岡空港駅が設置される可能性だって出てくる。

 一方、2010年に自衛隊の百里基地を軍民両用化することで誕生した茨城空港は静岡空港よりも年間乗降客数が少ないものの、開港以降は国内線・国際線ともに乗降客数が激増している。

 茨城空港は小美玉市に立地しているが、その泣き所は何と言っても空港アクセスが悪い点にある。茨城空港の最寄駅は市内にある常磐線の羽鳥駅だが、小さな駅のため空港玄関駅として利用しづらい。茨城空港利用者は、県内からなら水戸駅・石岡駅、近隣からの場合は東京駅・つくば駅・宇都宮駅などからバス利用になる。

 そんな茨城空港のアクセスを改善するべく、小美玉市議会はつくばエクスプレス(TX)の茨城空港延伸の実現を目指す「TX茨城空港延伸議会期成同盟会」を発足させた。「従来、こうした鉄道の延伸を国などに働きかける期成同盟会は県や市が中心になって組織されます。今回発足したTX茨城空港延伸議会期成同盟会は、市議会が中心になっているのは異例です」と話すのは小美玉市議会事務局の担当者だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
“進次郎劇場”で自民党への逆風は止まったか
《進次郎劇場で支持率反転》自民党内に高まる「衆参ダブル選挙をやれば勝てる」の声 自民党の参院選情勢調査では与党で61議席、過半数を12議席上回る予測
週刊ポスト
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト