◆“割り勘”か“三方一両損”か
ただ、会談するはずの“当事者”たちが、中止の場合にキャンセル代を払うかは、また別問題だろう。そもそも、今回のように第3国で開催される首脳会談の場合、会場等の費用は誰が負担するのか。
参考になるのが同地のシャングリラホテルで2015年11月に開催された習近平・中国国家主席と台湾の馬英九・総統(当時)の初の中台首脳会談だ。このときは互いに対等な立場での会談であることを示すために、首脳会談が行なわれたスイートルームの部屋代から晩餐会の食事代まで完全な“割り勘”と公表された。
報道陣向けのプレスセンターの準備と運営、警備にかかる経費も合わせると莫大な金がかかる。
「今回は世界中が注目する会談だけに警戒も厳重で、報道陣の人数を考えると伊勢志摩サミット並みの経費がかかってもおかしくありません」(第一生命経済研究所・永濱利廣首席エコノミスト)
2016年の伊勢志摩サミットは、会場のホテルやメディアセンターの整備・運営費に約150億円。警備費やテロ対策費用も合わせて計300億円超の費用を、開催国の日本が全額負担した。
そうした費用を3国がどう分けて負担するかは明らかではないが、いずれにせよ最も悩ましいのは、トランプ大統領が「やっぱりやめる」と言い出した場合だ。
一般客と同じ規定が適用されるなら、トランプも金正恩も“使っていないホテル代”を払わされることになる。ただ、シャングリラに、「再び会談が中止になった場合でも、一般客と同様に、米朝政府は予約した部屋代の全額を払うことになるのか」と質問したところ、「答えられない」とするのみだった。ホテル側の不安が窺える。
当然だろう。仮にそうなった場合、北朝鮮は“米国がドタキャンしたのだから、トランプに払わせろ”とゴネる可能性が十分にある。果たしてその時、ホテルは請求書をどこに回すのか。
※週刊ポスト2018年6月15日号