ビジネス

民泊新法施行前に撤退業者相次ぐ 「民泊の地下化」に懸念も

古い一軒家を自らリフォームした水野さんの民泊物件

 6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行を前に、民泊仲介大手のAirbnb(エアビーアンドビー)が、届け出のない違法なヤミ民泊の掲載削除を始めた。これは、民泊新法が施行された後に違法となる物件について、合法物件への変更などを求める観光庁からの通知によるものだ。

 届け出番号や許可番号が入力されていない民泊物件について削除を前倒しする徹底したスタンスで、既存の民泊ホストには衝撃が走っている。とはいえ、法令違反のサービス提供を受けることのあっせんは禁じられており(旅行業法13条3項2号、住宅宿泊事業法58条2号)、正規の登録を受けた民泊仲介業者のAirbnbが違法民泊を削除することは当然ともいえる。

 5月23日、Airbnbをはじめとした民泊仲介サイト運営会社計6社が、業界の健全化に向けて団体を立ち上げることで大筋合意したことが報じられた。民泊新法の施行を踏まえ、法やルールを守って民泊を普及・発展させていくという。

 Airbnbではファミリーマートと業務提携し、店舗で民泊のカギ受け渡しなど行うなど、民泊仲介各社と大手企業との業務提携も進んでいる。違法民泊のあっせんが許されないことは自明の理だろう。

 そもそも、民泊新法施行に際し自治体では届け出の受け付けをしているが、観光庁によると5月11日現在で724件と低調だという。Airbnbへ登録されていた民泊物件は6万件を超えていたことからすると確かに少ない。

 低調な理由として、まず設備面等のハードルが高いことが挙げられる。民泊新法では、住宅に家主が居住する“家主居住型”と、家主が不在となる“家主不在型”に民泊業態を区別しているが、特に不在型の場合には、住宅宿泊事管理業者への管理業務委託、一般の宿泊施設レベルの消防設備の設置が求められるなど、イニシャルコストも相当だろう。

 また、民泊新法に加え自治体が独自に制定する条例が厳しく申請をためらうケースのほか、民泊新法と同日に施行される改正旅館業法も理由の一つだとされている。旅館業法改正後は、最低客室数の基準撤廃や一定条件のもとフロントを設置しないことも認めるなど要件が緩和される。簡易宿所へのシフトも睨んだ様子伺いといったところか。

 民泊新法施行に際し、正規の届け出をしないという数名の民泊ホストに話を聞いたところ、リスクを承知で営業を続けるという者、撤退する者など様々だが、簡易宿所へシフトという声は多くなかった。いずれにせよ民泊仲介サイトへ登録できなければ営業を続けることは困難とのこと。

 このようにホスト間では、撤退も含めた“身の振り方”が喫緊の課題だという。あくまでも残された可能性として、と前置きしつつ「日本へは情報の流れない海外サイトから集客を続ける」と話す民泊ホストもいる。違法民泊が地下化すれば、実態の把握がいま以上に困難になることも想定される。

関連記事

トピックス

現地取材でわかった容疑者の素顔とは──(勤務先ホームページ/共同通信)
【伊万里市強盗殺人事件】同僚が証言するダム・ズイ・カン容疑者の素顔「無口でかなり大人しく、勤務態度はマジメ」「勤務外では釣りや家庭菜園の活動も」
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《巨人V9の真実》400勝投手・金田正一氏が語っていた「長嶋茂雄のすごいところ」 国鉄から移籍当初は「体の硬さ」に驚くも、トレーニングもケアも「やり始めたら半端じゃない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
フランクリン・D・ルーズベルト元大統領(写真中央)
【佐藤優氏×片山杜秀氏・知の巨人対談「昭和100年史」】戦後の日米関係を形作った「占領軍による統治」と「安保闘争」を振り返る
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン