もう1つ『ドクターX』と似ているワンパターンは、悪役のやられっぷり。『ドクターX』で大門が蛭間重勝(西田敏行)、海老名敬(遠藤憲一)、毒島隆之介(伊東四朗)らを叩きのめしたように、『ブラックペアン』も渡海が高階権太(小泉孝太郎)、西崎啓介(市川猿之助)、守屋信明(志垣太郎)、横山正(岡田浩暉)、松岡仁(音尾琢真)らをコテンパンにしてきました。
その悪役を輝かせているのが、福澤克雄監督と伊與田英徳プロデューサーのコンビ。二人はこの5年間『日曜劇場』の放送枠で、『半沢直樹』『ルーズヴェルト・ゲーム』『下町ロケット』『小さな巨人』『陸王』を手掛け、過剰演出スレスレの悪役を描いて高視聴率を獲得してきました。
視聴者の間に、「日曜21時は、悪役が成敗される姿を見てスカッとする時間」という意識が浸透しているのは間違いありません。「悪役が感情をあらわにして悔しがり、ガクッとひざをつくように打ちひしがれる」というワンパターンも確信犯的であり、視聴者の心をつかんでいるのです。
一方で配慮が感じられるのは、最新医療機器の「スナイプ」「ダーウィン」「カエサル」の扱い。実際の医療現場で最新医療機器が使われていることもあって、手術ミスは機械の故障や欠陥ではなく、医師たちの失敗にしています。
当作は、「治験コーディネーターの描写が現実とかけ離れている」として日本臨床薬理学会から抗議を受けてしまいました。しかし、当作のホームページには「医療用語 重要ワード?解説」というコーナーがあり、治験コーディネーターに関する詳細を紹介するなど、できる限りのフォローを行っています。
また、ホームページには、「監修ドクターが解説 片っ端から、教えてやるよ」「新時代の心臓手術―ロボット手術とは?」というコーナーもあり、確信犯的なワンパターンというコンセプトをフォローする努力が見られるのです。
◆ワンパターンを崩す終盤への期待感