三番手は古今亭今輔。往年の落語通は「お婆さん落語」の五代目を連想する名跡だが、この六代目はマニアックな新作落語で二ツ目の「錦之輔」時代から若い落語ファンに支持されてきた。野球漫画のウンチク満載のマクラから入った『甲子園の魔物』は、甲子園に棲む魔物に翻弄される高校球児を描いた傑作だ。
萬橘は『黄金の大黒』。長屋の連中のワイワイガヤガヤを賑やかに演じて実に楽しい。僕は2011年の「五月猫」で、二ツ目の「きつつき」時代の彼が演じた『長短』『棒鱈』の2席に衝撃を受け、以後追いかけるようになったという思い出がある。
トリは脱力感が魅力の寒空はだかが『東京タワーの歌』他をエアギターで歌いまくってお開き。さて来年は誰が出るか。ちなみに本欄イラスト担当の三遊亭兼好は2015年から2017年まで3年連続で出演して「トリ、トリ、一番手」だったが……?
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2018年7月6日号