3席目は『青菜』。前半は、植木屋が鯉の洗いを『ちりとてちん』の金さんみたいに大袈裟に誉めたり、青菜が好きなのを「子供の頃の仇名はポパイですから」と言ったりする以外はおとなしめだが、後半のオウム返しではハジケまくり。取り憑かれたようにお屋敷の旦那の真似をし続け「菜っ葉を取り寄せさせろ!」と逆上する植木屋の只事ではない様子に「お前には何が見えてるんだ!?」とひたすら怯える建具屋のリアクションが堪らなく可笑しい。
ラスト、押し入れから汗だくの女房が出てきて、そのままサゲると思いきや、何とこの女房が熱中症で亡くなってしまい、「それからというもの押し入れの中から『旦那様……鞍馬から……牛若丸が……』という声が毎夜聞こえてくるようになったといいます」という、まさかの怪談オチ! 完全に意表を突かれた。この奔放さが宮治の真骨頂、このまま暴れ続けてほしい。
●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。
※週刊ポスト2018年7月13日号