長谷部選手の会見で特徴的なのは、彼の視線がほとんど下へ向かないということだ。目線が下を向くのは、失望感や悔しさなどマイナス感情を口にする時、マイナス感情を抱いた過去について話す時がほとんど。それもほんの一瞬のことだ。どんな会見でも、チームについて、試合について話す長谷部選手はほとんど前を向いている。ベルギー戦で逆転負けした後のインタビューでも、視線を横に外すことはあっても、下を見ることはほとんどなかった。

 下を向かないという姿勢は、後悔にひきずられない、立ち止まらない、常に前を向き先を見ようというメッセージにもなる。常に上を向いているキャプテンが率いるチームに、人は悲観的で暗く困難な印象を持たないものだ。そして、これが彼のキャプテンとしての姿勢でもあったのではないだろうか。

 見ている側は無意識のうちに、そこからチームへの誇りや一緒に戦った仲間への思いを感じ取ることができる。チームを束ねるキャプテンとしては、まさに神対応といえる。

 引退について「喪失感がすごい」と語った長谷部選手。それでも今の気持ちを「99%の満足感と1%の後悔」と、視線を上にして、あごを上げて言い切り、“やり切った感”を印象付けた。1%の後悔が、次に何を生みだすのか。今後の活躍に期待したい。

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