同じく、東京・原宿の竹下通りにあるアパレル店・X。ここでも、グッチやイブサンローラン、シャネルといった高級ブランドの古めかしいロゴが入ったTシャツやトレーナー、キャップなどを扱っている。全てが”ブート品”だ。通りで強引な客引きをすることでも有名な同店店員に、ブート品について聞いてみると……。
──ブート品は偽物ではないのか?
「これはアメリカのファッション文化。厳密にはロゴも違うしパロディ商品」
──正規のブランド品、ブランド品の古着だと思って買っていく客もいるが
「ファッションを知らない人にいろいろと言われる筋合いはない」
──商標権の侵害をしているのではないか
「儲けは少ないし、ただ仕入れているだけ……」
こうした問答を繰り返していると、すぐに店からつまみ出された筆者。男性ファッション誌で活躍するスタイリストは、同店をはじめとした「ブート品」を取り扱う店について、次のように説明する。
「確かにブート品はアメリカで流行りましたし、その古着が結構日本に入ってきている。ただ現在は、当時のアメリカのブート品ではなく、新たなボディ(※無地のTシャツやトレーナーなど)にそれっぽいロゴを印刷して売っている業者もある。原宿のX店で扱っているものはブート品どころか、ブート品に似せて作られた偽物の偽物(笑)。現に店員は、何も知らない若い子を通りでキャッチして店に連れてきては、ブート品が存在しないはずのシュプリームやナイキ、アディダスの人気商品を”ブート品”だといって売りつけています」
そもそもファッションの世界で「ブート品」と呼ばれるのは、1980年代から1990年代初めに流行した、ルイ・ヴィトンやシャネル、グッチなど高級ブランドのロゴを用いたカジュアル衣料のことだ。1994年創業で、スケートボードファッションとしてスタートしているシュプリームは対象外だ。スポーツブランドであるナイキやアディダスも同様の理由でありえない。だが、海賊版やファッションそのものについてあまり知識がない若者たちは、違いがわからない。
確かにおしゃれな感じがする「ブート品」だが、平たく言えば「単なる偽物」。そもそも本家本元の「ブート品」も、アメリカ・ハーレム街でアウトローな商店主によって、違法であることを承知のうえで生み出されたもの。今でいう「反社会勢力」によって、カネもうけのために作られた粗悪品なのだ。「偽物は恥ずかしい」というまっとうな感覚を、若者にはぜひ取り戻してほしいものだ。