自力で飛び上がることができない“グライダー型”の人間ではなく、思考力というエンジンを備えた“飛行機型”の人間を目指そう―自分の頭で考える力の重要性を説いた著書『思考の整理学』は大学生やエリートビジネスマンのバイブルとなり、今なお東大、京大の生協でベストセラーとなっている。1983年の刊行以来、累計225万部に達する。
実はその外山氏、30歳だった約65年前から投資を始め、現在でも株取引を続ける“ベテラン個人投資家”の顔を持っているのだ。
◆10年で10倍、長くやるから増える
「初めて買った株は、『キリンビール』『東京製綱』『旭硝子(現・AGC)』『日本光学工業(現・ニコン)』の4銘柄でした。100銘柄以上保有していた時期もありましたが、現在は90銘柄ぐらいです。僕のやり方の原則は『買ったら、売らない』です」
一部でデイトレードが流行し、個別株への投資はリスクの高い“危険なギャンブル”のイメージが強くなった。四六時中、何台ものディスプレイでチャートをにらみ、細かく利益を確定する。だが、外山氏のやり方は全く違っている。
「株は“売買するものではない”と考えるくらいでちょうどいいと思います。僕が65年前に株式投資を始めた時は、インフレ対策の“貯蓄”のつもりでした。当時も、(元本割れがない)タンス預金や貯蓄型の生命保険などを、リスクが小さいと考えて選択する人が多かった。
しかし、ここにはインフレの観点が抜けています。株の価格は、長期で見れば基本的に物価と連動します。投機的に売買を繰り返すのではなく、“貯蓄”の一環として購入し、長く持ち続ける。そうすれば、10年で10倍にだってなります。みんな、ちょっと上がると売りたがるのがよくない」