各会場のバックネット裏には日大三の小倉全由監督をはじめ、大阪桐蔭の石田寿也コーチや強豪私立の関係者がズラリ。
石田コーチはスピードガンを手に参加投手の球速を計り、またある関係者はストップウォッチを使って一塁までの走塁タイムをメモしていた。さながら未来の甲子園球児の“見本市”である。全国制覇も達成した新興校の関係者が話す。
「ここに来た目的は、どうしてもうちに欲しい選手がいるから。その選手は、中学2年生の時からマークしています。他の学校関係者も、狙う選手が異なるだけで、目的は同じではないか。おおっぴらにしたくないことなので、私がここに来ていることは内緒にしておいてください」
伝統校は独自のネットワークを持ち、OBが指導する硬式野球チームなどから有望選手の情報を集めている。トライアウトでは、既に目を付けていた選手の成長を見定めるだけでなく、新たな才能と出会ったら、チーム関係者を通じて“交渉”に入ってゆく。
当然、球児側にも思惑がある。トライアウトで目立つことができれば、強豪校が声をかけてくれるのである。そして保護者にも、願わくば入学金や授業料が免除となる「特待生」として入学できる条件の良い学校に──そんな皮算用がある。
◆元プロ選手も熱視線
高校関係者の中には、三浦貴氏(元巨人、現浦和学院コーチ)や中谷仁氏(元阪神ほか、現智弁和歌山コーチ)といった元プロ野球選手の姿もあった。