◆命を賭して戦った人たちへの感謝
戦後、秘密部隊であることから護郷隊が評価されることはなく、護郷隊員の家族に遺族年金が支払われることもなかった。
日本で唯一、米軍と対峙した沖縄の人々、しかも実際に銃を持って戦い、やむなく故郷に火をつけるしかなかった護郷隊員たちは、その負い目から自分の経験を心の内にとどめてきた。そこに思いを馳せれば、いま彼らが反戦反米を唱えるのは当然だと思える。基地があれば戦争に巻き込まれることを、彼らは肌感覚として理解しているのだ。
護郷隊員の多くは当時、軍国少年であり軍人になることは大きな名誉だった。ここでいう軍国とは、左翼が偏向していう意味とは違う。少年兵が天皇万歳、日本国万歳と叫ぶのは、分解していけば故郷であり、家族であり、友人であり、それらを護りたいという純粋な気持ちからであった。
私たちが平和を祈念するときにはまず彼らや特攻隊員たちのような、自らの命を賭して戦った人たちへの感謝の思いを出発点にしなければならないと思う。こう言うとすぐに「戦争礼賛だ」と受け取る人がいるが、それは彼らの思いを受け止めるよりもその方がラクだからだ。果たしてそれで本当に平和は実現するのだろうか。
これからの沖縄を、日本を考えるとき、私たちに課せられた使命は、護郷隊員や特攻隊員の闘いの事実を後世に伝え残していくことである。
●みやもと・まさふみ/1953年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、産経新聞社入社。那覇支局長などを経て産経新聞東京本社編集委員。『少年兵はなぜ故郷に火を放ったのか』(KADOKAWA/角川学芸出版刊)、『爆買いされる日本の領土』(角川新書)ほか著書多数。
■取材・構成/岸川貴文(フリーライター)
※SAPIO2018年7・8月号